パイオニア環境分析1(2019/12/21~22)
前回に引き続きパイオニアの勉強を兼ねて執筆。
Preliminaryの12/21実施分と、週末に開催されたChallengeイベントを対象に調査。
ChallengeもPreliminary同様Magic Onlineのイベントの一種。細かな差異はさておき、結果を追うだけであれば競技色の度合い・メタゲームの信頼度は以下の通り。
↑ PTQ
↑ Challenge
↓ Preliminary
↓ League
開催頻度はPTQが月1(かなりバラつきあり)、Challengeが週1、Preliminaryが毎日、Leagueが随時。今回は週末を挟んだことでChallengeの結果も掲載されていたので、併せて取り扱う。Leagueは前回の記事でも述べた通りノイズが多いので触れない。記事の方針は直近のトーナメントシーンを追う事なので、各々のニーズに合った情報を追うのが良い。
目次
成績一覧
▼Pioneer Preliminary(2019/12/21実施)
・5-0
イゼットフェニックス
・4-1
白単人間
赤単ミッドレンジ
緑単ランプ
ロータスコンボ
・3-2
黒単アグロ
赤単ミッドレンジ
緑単アグロ
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロール
ゴルガリ季節
グルールランプ
ジャンドかまど霊気池
▼Pioneer Challenge(2019/12/22実施)
・9-1(優勝)
赤単アグロ(タッチ《ボロスの魔除け》)
・8-2(準優勝)
アゾリウスコントロール
・7-2(3位~4位)
アゾリウスコントロール
イゼットフェニックス
・7-1(5位)
イゼットフェニックス
・6-2(6位~8位)
緑単信心
バントスピリット
ロータスコンボ
・5-2(9位~27位)
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
黒単アグロ
緑単ランプ
緑単ランプ
緑単ランプ
アゾリウスコントロール
アゾリウススピリット
ディミーアコントロール
イゼットフェニックス
イゼットフェニックス
イゼットハサミ
ゴルガリ魂剥ぎ
グルールアグロ
グルールアグロ
4Cジェスカイの隆盛コンボ
・4-3(28位~32位)
黒単アグロ
赤単タッチ黒アグロ
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロール
ロータスコンボ
注目デッキ紹介
▼イゼットフェニックス
Arew - Pioneer Challenge(2019/12/22) 4位 |
|
メインボード | サイドボード |
クリーチャー(11) |
2 マグマのしぶき |
イゼットフェニックスがPreliminaryにおける3度目の5-0を達成。更にChallengeにおいてもトップ8に2名を輩出(内1名は予選全勝)。今最もノッているデッキと言って差し支えない。
どのリストもメインボードの差異は微々たるもので、サイドボードの採択に少しずつ変更が加わりつつあるが、1枚挿しが多く「お試し感」が強い。メインボードの盤石さが伺え、デッキの完成度は他を頭一つ抜いている。
これだけ目立った成績を残したとなると、他デッキをプレイする際も警戒の度合いを引き上げざるを得ない。
対策カードは十分存在しており、今後は各デッキのサイドボードにヘイトカードが増加していくものと思われる。
イゼットフェニックス視点では、カラーリングの都合置き物に触りづらく、アーティファクトであれば《削剥》できるが、エンチャントは対処が難しい。この場合別角度の勝ち手段を用意する方がスマートで、メインボードの《若き紅蓮術師》に加え、軸となるプレインズウォーカーや破壊不能である神を追加していく動きが予想される。
また《弾けるドレイク》は追放領域もパワーの算出に含めることから《安らかなる眠り》や《虚空の力線》には強い。メインボードでは上手くいかずともサイドプランとしては良好な可能性もあるので、固まり切っていないサイドボードスロットを用いてプランの策定が進められるだろう。
墓地対策のような「対処を目論む相手」には多角的な脅威で対抗するのがベター。
▼ロータスコンボ
Aardos - Pioneer Challenge(2019/12/22) 7位 |
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メインボード | サイドボード |
クリーチャー(12) |
1 約束された終末、エムラクール 2 霊気のほろこび 2 神秘の論争 2 神々の憤怒 1 神秘を操る者、ジェイス 1 啓示の刻 2 思考のひずみ 1 精霊龍、ウギン 1 全知 1 無限への突入 1 啓示の終焉 |
パイオニア環境のコンボデッキを代表する存在、ロータスコンボ。何をするのか知らない人間もいると思うので軽く紹介。
まずは各種ドローソースや《森の占術》で《睡蓮の原野》を見つけ出し、これを場にセットする。1ターン目に《樹上の草食獣》か2ターン目に《成長のらせん》をプレイすることで、早ければ2ターン目には設置可能。
《睡蓮の原野》は一度場に出てしまえば《演劇の舞台》でコピーすることが可能で、土地2枚を生贄にする能力は「場に出た時」の誘発効果なので、コピーであればそのデメリットは発動せず、マナは飛躍的に増える。
コピーを含めて2枚以上《睡蓮の原野》を場に揃えることができれば準備完了。これらを《砂時計の侍臣》《見えざる糸》《熟読》でアンタップすることでマナが増えていく。《砂時計の侍臣》は1マナ増えつつ1ドロー、《熟読》は1マナ増えつつ3枚ドロー、《見えざる糸》は手札は減るが4マナ(!)増える。
増えた手札・マナの使い道は様々で、主流は《全知》と《願いのフェイ》を使ったタイプ。
①《願いのフェイ》または素引きで《全知》を用意し、プレイ。
②《願いのフェイ》でサイドボードから《無限への突入》を手札に加え、山札を全て手札へ。
③《願いのフェイ》でサイドボードから《神秘を操る者、ジェイス》を手札に加え、プラス効果を起動。勝利。
後発で《発展+発破》を搭載したタイプも登場。《見えざる糸》を乱打して膨大なマナを生み出し、巨大な《発破》を放つか、《二倍詠唱》でコピーする。
また多くの場合《嵐の伝導者、ラル》とのハイブリットコンボを搭載。
①《嵐の伝導者、ラル》をプレイ
②4マナ以下のソーサリーまたはインスタントに対して《発展》をプレイ
③その《発展》に対して《発展》をプレイ
④以下《発展》をコピーし続けることで無限ループが発生し、《嵐の伝導者、ラル》の常在型能力で無限ダメージ
Preliminary4-1リストには《霊気貯蔵器》が採用されており、デッキを回す過程では多くの呪文をプレイすることになるので、バーンでの勝利も可能。
要は、大量のマナと手札があれば大体のことはできてしまうので、フィニッシュ手段は大方何でも許容される。
《むかしむかし》健在時はこれにより《睡蓮の原野》《樹上の草食獣》《願いのフェイ》と言った一通りのキーカードにアクセスが可能で高いポテンシャルを示していたが、禁止改定により弱体化してしまった。しかしその後もコンボフリークらによって繰り返すチューンナップが施されており、徐々に完成度を上げてきている。パイオニア発祥のコンボデッキということもありまだまだ歴史が浅いデッキなので、今後も進化が期待される。
▼赤単アグロ(タッチ《ボロスの魔除け》)
D00mwake - Pioneer Challenge(2019/12/22) 優勝 |
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メインボード | サイドボード |
クリーチャー(18) |
3 サテュロスの火踊り 3 暴れ回るフェロキドン 3 岩への繋ぎ止め 3 安らかなる眠り 3 灼熱の血 |
Challengeイベントでは赤単ミッドレンジの活躍も目立った(5-2ラインに5人)が、優勝はアグロタイプ。
赤単色の構造に、《ボロスの魔除け》のために白をタッチしている。
また1色を追加したことでサイドボードの選択肢にも優秀なラインナップが追加されており、《岩への繋ぎ止め》はパイオニア環境で一定の人気を博する緑系アグロに有効。《安らかなる眠り》は既に紹介したイゼットフェニックスに効果がある。
青白コンとグルールアグロっていう対極のデッキが幅効かせてて、グルールには軽い単除去で序盤のマナクリを弾いて1⇒3の動きを阻止するのが有効なんだけど、単純な除去は青白に腐るので良くない。ライフを詰めるという方向で火力が無駄にならないイゼフェニと赤単が勝っている、という仮説。
— kenta harane (@jspd_) 2019年12月22日
前回の記事をアップした後更に分析を行い、現環境が赤にとって風向きの良いものであるという仮説を立てた。《エルフの神秘家》《ラノワールのエルフ》を用いるマナクリーチャーデッキが一定数存在する以上最軽量の除去呪文には価値があるが、《致命的な一押し》ではアゾリウスコントロールに不利がついてしまう。火力呪文はライフを攻める役割を持てるため、同マッチアップでも腐ることがなく優秀。
《王冠泥棒、オーコ》が退場したことで食物ギミックは連鎖的に価値を落とし、環境から有用なライフ回復要素は失われた。
赤単アグロが《僧院の速槍》《大歓楽の幻霊》《ボロスの魔除け》といったモダン級の呪文を扱える中、同じくモダンでプレイされている《機を見た援軍》《台所の嫌がらせ屋》《スラーグ牙》と言ったライフゲインの看板要素は存在しない。
またパイオニア環境のマナベースがダメージランドとギルドランドを多用するものであることもポイントで、多くのデッキの想定ライフポイントが20を下回っているのも追い風となる要素。
総括
流行デッキの中でも優劣が付き始めた頃。(デッキ間の相性ではなく、完成度やデッキとしてのポテンシャル)
イゼットフェニックス・アゾリウスコントロールあたりは高い頻度で上位に食い込んでくるし、逆にグルールアグロ・緑単ランプ・ロータスコンボなどは安定感に難がありアベレージが落ち着かない。
好成績を残すものは再現性の高い動きを有しており、これは長期ラウンドを戦う上で重要な要素。Preliminaryのような短いラウンド数のイベントでは全勝することもあるが、Challengeのような長期ラウンドのイベントでは最終的に負けが込みやすくなる。複数イベントに跨って観察を続けるのが良い。
いくらかのイベントをまとめた結果、現状のメタゲームを以下のように認識。
tier1:イゼットフェニックス、アゾリウスコントロール
tier2:赤単ミッドレンジ、グルールアグロ
tier3:緑単ランプ、ロータスコンボ
Challenge優勝の赤単アグロ含め、他のデッキは絶対値が少ないので含めづらい。とは言え赤単アグロに関して言えば今後爆発的に増えると思われるので、すぐにtier入りすると思う。(Magic Online上のメタゲームなので、規模の大きいMagic Onlineイベントの影響力は強い)
赤いデッキの活躍が目立つため、定石に倣い、メタゲームの循環を考慮すれば次はそれに強い骨太のクリーチャーデッキの台頭が予想される。しかしそのような構成はアゾリウスコントロールに脆くなりがちであるため、なかなか単純にはいかない。しばらくは前述の赤単アグロが幅を利かせるだろうか。
どういったアイデアが現状を打破していくのか見物。