パイオニア環境分析5(2019/12/28〜30)〜吹き荒れるイロモノ〜
Preliminaryが2つと、週末のためChallengeが1つ。
目次
成績一覧
▼Preliminary 12/28実施
・5-0
赤単アグロ(タッチ黒)
・4-1
黒単アグロ
緑単アグロ
グルールアグロ
エスパーコントロール
バントカンパニー
スゥルタイドレッジ
スゥルタイかまど霊域池
ジャンド潜在能力
・3-2
白単人間
黒単アグロ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単果敢(タッチ《ボロスの魔除け》)
緑単アグロ
緑単ランプ
緑単信心
イゼットフェニックス
ジェスカイファイアーズ
スゥルタイドレッジ
ティムール門
ロータスコンボ
ジェスカイの隆盛コンボ
▼Preliminary 12/30実施
・5-0
赤単ミッドレンジ
ロータスコンボ
・4-1
黒単アグロ
黒単ゾンビ
赤単アグロ
赤単アグロ
赤単ミッドレンジ
緑単ランプ
ゴルガリ鱗
バントカンパニー
スゥルタイドレッジ
スゥルタイドレッジ
・3-2
赤単アグロ
赤単アグロ
赤単アグロ(タッチ《ボロスの魔除け》)
赤単アグロ(タッチ《ボロスの魔除け》)
赤単ミッドレンジ(タッチ黒)
緑単アグロ(タッチ青)
緑単ランプ
緑単ランプ
緑単ランプ
緑単ランプ
ディミーアミッドレンジ
イゼットフェニックス
イゼットフェニックス
イゼットフェニックス
グルール潜在能力
グリクシスミッドレンジ
スゥルタイドレッジ
スゥルタイドレッジ
ジャンドアリストクラッツ
ロータスコンボ
ロータスコンボ
▼Challenge 12/29実施
・10-1(1位)
グルール潜在能力
・9-2(2位)
緑単アグロ
・7-3(3位~4位)
イゼットフェニックス
スゥルタイドレッジ
・7-2(5位~8位)
バントスピリット
イゼットハサミ
緑単ランプ
緑単ランプ
・6-2(9位~21位)
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
緑単ランプ
緑単ランプ
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロール
イゼットフェニックス
ゴルガリ魂剥ぎ
グルールアグロ
スゥルタイミッドレンジ
ジャンドかまど
5C白日ニヴ
・5-3(22位~32位)
黒単アグロ
黒単アグロ
黒単アグロ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
緑単アグロ
緑単ランプ
イゼットフェニックス
ラクドスミッドレンジ
ゴルガリ魂剥ぎ
Preliminaryでは前回(リンク)に続き赤単系のデッキが好成績を残しており、4-1以上の21デッキ中5デッキを占め、デッキタイプとしては最多。
一方のChallengeはシングルエリミネーションに進出したデッキの中に赤単の姿はなく、Preliminaryでは駆逐されつつあるイゼットフェニックスや緑単ランプが食い込んでくる興味深い結果に。Preliminaryでは上位にほとんど見られなくなったアゾリウスコントロールも2デッキが6-2のスコアを残している。
過去流行したデッキのポテンシャルはどれも確かなものなので、現在のメタゲームを正しく理解し、変化していく事で対応を図れる可能性は十分にある。
注目デッキ紹介
▼グルール潜在能力
senberg - Pioneer Challenge(2019/12/29) 10-1(優勝) |
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メインボード | サイドボード |
クリーチャー(27) |
2 漁る軟泥 4 ゴブリンの熟練扇動者 2 形成師の聖域 2 墓掘りの檻 2 減衰球 2 目覚めた猛火、チャンドラ 1 森 |
デッキのキーカードは《吹き荒れる潜在能力》。非常に禍々しい効果を持っており、これまでも専らコンボ用カードとしてプレイされてきた。
パイオニアにおいても《時を解す者、テフェリー》と組み合わせることで一切の呪文が唱えられなくなるロックコンボが存在していたが、このグルールカラーのタイプでは全く別の勝ち手段を見据えている。
《吹き荒れる潜在能力》が存在する状態で《恋煩いの野獣》を出来事としてプレイすると、これはスタック上では「ソーサリー」の扱いを受けることになり、潜在能力は「ソーサリー」を求めて山札を捲り始める。その結果、本来のカードタイプが「クリーチャー」である《恋煩いの野獣》は無視され、デッキ唯一の純粋な「ソーサリー」である《無限への突入》が必ず捲れる仕組みになっている。(手札に引いていなければ)
《無限への突入》で山札を全て引いた後、その効果で《怒れる腹音鳴らし》を山札に戻し、《歩行バリスタ》をX=0で唱えることで《怒れる腹音鳴らし》が捲れるので、最後は手札にある土地を全て対戦相手に投げつけることで勝利。
同じ要領で、《砕骨の巨人》を出来事で唱えた場合、デッキ内のインスタントは《呼応した呼集》しか無いので必ずこれが捲れる。《恋煩いの野獣》をサーチして出来事で唱えればコンボ達成。
パイオニアにおける2枚コンボは一見把握破格に思えるが、コンボパーツの内《無限への突入》を手札に引いてしまった場合はコンボ達成の目が無くなってしまう他、5マナと重いエンチャントを軸としたコンボであるため、ハンデス・カウンター・置き物破壊など一通りの妨害を受けることになり、穴は多い。
この点はサブプランであるビートダウンでの補填を図っており、コンボに依存せずとも「普通に殴って勝つ」ことも見据えた構成。2種8枚のマナクリーチャーから始まるトップスピードの展開力は従来のグルールアグロと同等のものを持っており、コンボパーツである《恋煩いの野獣》もビートダウン戦力へとシフトが可能。
《風雲船長ラネリー》はデッキの性質を非常にわかりやすく表現した1枚で、《吹き荒れる潜在能力》デッキとしてはマナブーストの役割を持ち、《ラノワールのエルフ》から繋ぐことで3ターン目の《吹き荒れる潜在能力》に貢献する。一方で、ビートダウンデッキとしては3マナの速攻クリーチャーとして対戦相手にプレッシャーを掛ける。両面の役割を持つクリーチャー。
カウンターを有するコントロールデッキに対して5マナのエンチャント呪文を通すのは非常に困難であるため、サイドボード後はビートダウンモードを強化するカードを用意。特にアゾリウスコントロールは潜在能力デッキにとっての天敵である《時を解す者、テフェリー》を有し、こちらの潜在能力が"友情コンボ"を引き起こしてしまう。(潜在能力で捲れた呪文はインスタントタイミングで唱えることになるため、相手の場にテフェリーが存在していると一切の呪文が唱えられなくなってしまう)
そのためこうしたデッキ相手にはコンボパーツを全て下げて戦うことも考慮に入れる必要があり、その点で《ゴブリンの熟練扇動者》はデッキとマッチしているし、《目覚めた猛火、チャンドラ》もビートダウン戦略の着地点としては非常に良い働きをする。
個人的に、コンボデッキを評価する基準に「コンボ以外のプランを持っているか」があり、その点グルール潜在能力は非常に現実的なビートダウン戦略を有していて好印象。コンボ以外のプランが無い場合、対戦相手はコンボの妨害ないしそれが達成されるまでの攻めに特化した対策を行えば良く、サイドボード後のデッキの最適化が容易で、2ゲーム目以降の対戦が非常にハードなものとなる。今回のように「コンボもあるがビートダウンもある」ともなれば対策は途端に難航化する。
Preliminaryにおいてもしばしば入賞を果たしていたが、Challengeイベントでは遂に優勝を遂げた。今後どう影響していくのか見物。
▼スゥルタイドレッジ
AvatarOfWoe - Pioneer Challenge(2019/12/29) 7-3(4位) |
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メインボード | サイドボード |
クリーチャー(27) |
2 思考囲い 3 致命的な一押し 1 自然のままに 1 軽蔑的な一撃 4 暗殺者の戦利品 1 悪戦+苦闘 1 減衰球 2 悪夢を引き裂く者、アショク |
パイオニア発足当初より存在したアーキタイプだが、目立った活躍が見られず低迷し続けていた。最近になって好成績を収めるようになったため注目。テンプレートが確立し、デッキとして完成し始めた。
デッキの動きはやや複雑で分岐点も多く、相手側から施される墓地対策にどう合わせてサイドボードするかなど、デッキに対する理解とノウハウが重要なデッキ。結果を出し始めるのに時間を要することにも頷け、このあたりはアグロデッキとの明確な差異。
プレイは複雑だが構成はシンプルで、主に3つの要素から成る。まずは4種16枚の「墓地肥やし」から始め、墓地リソースを膨らませる。
上記墓地肥やしから落ちることを期待する「墓地リソース」達。山札から落ちた瞬間即時に効力を発揮するもの、遅延型誘発、任意のタイミングで起動するものまで様々。
フィニッシュ手段はいくつかあり、相手次第では墓地から溢れ出す《憑依された死体》《秘蔵の縫合体》だけでノックアウトできてしまうこともあるが、基本的には《グルマグのアンコウ》のパンチ力に委ねるか、横並びからの《悪戦+苦闘》、《州民を滅ぼすもの》による一撃必殺でゲームに蓋をする。
ドレッジは一般的なデッキとアドバンテージの得方が異なっているため、まずは考え方の整理が必要。バーンデッキが火力呪文を対戦相手の本体に打ち込んでいくように、アドバンテージにはいくつかの形がある。ドレッジにとってのそれが「墓地リソース」にあたり、「墓地肥やし」呪文を唱えることでカードを墓地に貯めていき、その中に「墓地リソース」が1枚含まれる毎にアドバンテージを得ていく。
また「墓地肥やし」の行動そのものは準備のアクションなのでテンポを失う動きではあるが、0マナ1/1飛行(《ナルコメーバ》)、0マナ3/3(《秘蔵の縫合体》)、2マナ2/2+1/1飛行(《憑依された死体》)、0マナ3点ダメージ3点回復(《這い寄る恐怖》)といった具合に、捲れた墓地リソースらがそれを補っていく。
手札から墓地、墓地から場、場からライフといった具合に、アドバンテージの形態が段階的・並行的に変化していくため、今自分が何を行っており、この後の動きで何を成していくのかをよく理解し、それに向かってプレイを進めていく必要がある。繰り返しになるが、理解とノウハウが重要なデッキ。
もう一つの理解のポイントとして「対戦相手が行う墓地対策」がある。パイオニアにはモダンに劣らない質の墓地対策が存在しており、サイドボードの常連となっている。これへの対抗策は必要不可欠。
幸い置き物対策にも軽く使い勝手の良いものが揃っている。中でも《暗殺者の戦利品》は対戦相手の採択・ドロー内容に依存すること無く使い勝手が良い。強烈なデメリットを有するものの、墓地対策のいくつかは「対処できなければ負け」レベルの脅威であるため非常時の緊急手段としては最適な存在。上記リストでも4枚が選ばれている。
雑感
これまでのPreliminaryの入賞デッキにも"イロモノ"はいくつか含まれていたが、意図的に触れないようにしてきた。単発的なものである可能性が高く、トーナメントシーンを追いかけるという観点ではノイズになりがち。事実として継続的に好成績を残すものは見当たらなかった。
だが今回の潜在能力のように極めて優秀な成績を収めたり、ドレッジのように継続的に好成績を上げるものに関してはそのポテンシャルを評価し、むしろ積極的に目を向けていく必要がある。