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続きそうだったらなんか考える

『イコリア』ドラフト備忘録

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『イコリア』ドラフトが最高に面白い。最近は暇さえあればプレイしてしまっている。
次期シーズンのマジック・ライバルズ・リーグに招待されているのでラダーを頑張る意味はない(ミシックインビテーショナル『ゼンディカーの夜明け』の参加権を持っている)のだが、無駄に2か月連続でミシックに到達した。

 

 

環境の仕様に慣れたこともあり5月は特に調子が良く、約10回のドラフトでミシックに到達。勝率は78%を記録した。

『ラヴニカの献身』の頃に書いたリミテッド記事が未だ一定数アクセスがあることがわかり、どうやらアリーナのリミテッドラダーが当該のセットになるタイミングで需要が生じているようだった。せっかくなので、今回は『イコリア』版の記録を残しておこうと思う。

 

またあらかじめ言っておきたいことが一点。
今セットは人によってアーキタイプ定義やカード評価の解釈が大きく異なる。下記は原根個人の解釈によるもので、知見の一つとして目を通してもらえれば幸い。他にもリミテッド記事もちらほら出ているようなので、興味のある人は探してみてほしい。

 

目次

 

環境定義

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3色のマルチレアやトライランドの存在から対抗3色のデッキ構築を求められているように感じるかもしれないが、そんなことはない。基本は2色、必要に応じて多色化を検討する程度で、むやみやたらな多色化は推奨されない。なぜなら、特殊地形を始めとするマナベースの確保に手順を要する関係上、相対的にデッキパワーが低下してしまうため。皆が皆3色デッキを目指し、マナベースの成立に手順を費やすのであれば条件は同じだが、2色でも十分強力なデッキを構築できる(むしろ2色の方が強いことの方が多い)ため、余計な手順を費やした分だけデッキパワーが下がってしまう恐れがある。上記レアのような「多色化による明確なバリュー」を担保できた際など、必要に応じて検討する。

 

サンプルリスト - ジェスカイコントロール(7勝2敗)

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《見事な根本原理》に寄せ、特殊地形を積極的にピックしてマナベース問題をクリアしたが、その分デッキ内の呪文が弱くなってしまっている。弱いところを固め引いてしまうと非常に苦しい戦いを強いられる。あまり推奨されるやり方ではない。

 

逆に、緑ベースの変容デッキは積極的な多色化を検討したい。《ファーティリド》《渡る大角》《彼方見》等、変容ギミックを構築するカード群がマナサポートを兼ねており、単純な変容シナジーだけでなく多色化のバリューを兼ねたいため。

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従来のセットよろしく今回の緑も多色化が容易なデザイン

 

上記前提の元、各カラーリングのアーキタイプを整理する。最近のセットは当該カラーのマルチアンコモン・レアを見れば、その色がやりたいことが書いてあるので親切。

 

▼白青 - 飛行ビート

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古来より伝わる飛行戦略。地上を固め、飛行で殴る。
至ってシンプルなコンセプトで、大抵のセットではそれなりに戦えるが、今セットの白青飛行は弱い。飛行クリーチャーの質が低く、除去が豊富な環境であるためそれらを守りづらい。総じて「飛行クリーチャーに寄せるバリューがそれほど大きくない」。

▼白黒 - 人間

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「完成してしまえば強い」アーキタイプ逆に中途半端な作りになってしまうと弱い。ハイリスクハイリターン。
デッキ作成に求められるパーツが限定されており、余分なカードが入り出すと途端にデッキパワーが落ちていく。ほとんどが専用パーツなのでポジションさえ取れていればカードは集まりやすいが、パックから出るかどうかの運に左右されやすく、万が一卓に2人以上できてしまった場合は概ねアウト。

 

▼白赤 - サイクリング

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環境最強アーキタイプ《天頂の閃光》のカードパワーが凄まじく、2020年5月現在のスタンダードシーンでもtier1を張るレベルにある。
今セットのサイクリングカードは一部を除きサイクリングコストが無色であるため、色の合っていないサイクリングカードもピックすることができ、キーカードさえ確保できていれば卓に2人できてしまっても十分な量プレイアブルを確保できる。白黒人間と異なり崩れの形でも強さを保てるのが優位点。

 

▼白緑 - 警戒

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警戒自体は単なるキーワード能力に過ぎず、「警戒を持つクリーチャーにうんぬんかんぬん」と書かれたカードで役割を付していく事になるが、それはすなわち"特定のカードに役割が集中し除去のリスクが高い"ということ。
今セットはコモンの除去が豊富にあり、除去リスクの高さはアーキタイプの弱さに直結する。

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大方《堅実な立ち位置》を用いたブチ切れ戦略になりがち。もちろん弱い。4勝御の字。

 

▼青黒 - 瞬速

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挙げはしたものの、「瞬速」というアーキタイプは成立しない。瞬速に寄せるバリューがほとんど存在せず、レアの《滑りかすれ》はハイバリューだが、仮にこれをファーストピックできたとしてもその能力を使い倒せるほど瞬速カードがセット内に存在しない。
青黒は従来のリミテッドよろしく除去とカウンターで立ち回る「青黒コントロール」として構築することになる。

 

▼青赤 - スペル

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非クリーチャー呪文(スペル)を主体とするカラーリング。キーカードがコモンに集中しており、アーキタイプ参入の際の成功率・再現性が共に高い。アンコモン以上のレアリティはデッキを単純強化していく位置付け。最低限のデッキパワーが担保されやすいのが魅力のアーキタイプ。勝率も安定しやすい。

 

▼青緑 - 変容

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青緑には《万能のブラッシュワグ》《本質共生体》《微光クラゲ》等優秀な変容元クリーチャーが揃っており、これに《渡る大角》《夢尾の鷺》他上記アンコモンを変容するビートダウン。

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同じく変容を多用する黒緑が除去を扱いやすいのに対し、青緑はテンポに優れる。しかし、前述の通りセット内の除去が豊富であり、リスクの観点から黒緑よりも劣ると考えている。

 

▼黒赤 - 威迫

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テーマは威迫だが、威迫に寄せることで得られるバリューがアンコモン以上にしか存在せず、レアリティに大きく依存。

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《一時的な連帯》はコモンだが、カードの強さは《怪物の兵器化》の有無で大きく変化。結局のところレアリティ依存となってしまう。
アーキタイプを意識していても関連したカードが集まらず、結果的に除去+クリーチャーのデッキになってしまう事が多い。大方「黒赤ミッドレンジ」、たまに「黒赤威迫」になる。完成された黒赤威迫は非常に強力だが、アンコモンだらけの再現性が極めて低いデッキになりがちのため、基本はミッドレンジで考える。

 

▼黒緑 - 墓地活用

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従来の黒緑よろしくボードコントロールのカラーリング。
一つ一つのカードが骨太で、緑が絡んでいるため多色化も容易、他色のパワーカードを取り込むことでデッキパワーの底上げが図れる。黒い除去を扱えることで対応力も高く、重いデッキの中では環境一の力を持つアーキタイプ
今回はここに墓地肥やし+それを活用するカードが多く存在。特筆すべきは《再来》の強さで、これが分かりやすい入り口となる。

 

▼赤緑 - トランプル

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白緑警戒同様キーワード能力を参照するアーキタイプだが、弱い。白青飛行と合わせて環境ワーストの双肩。両者に共通して言えるのは「そのカラーリングを取ることで得られるバリューが無いに等しい」こと。
唯一、《クオーツウッドの壊し屋》は極めて強力なレアだが、「赤が濃い赤緑のレア」というせいで評価が下がってしまう程にデッドカラー。《クオーツウッドの壊し屋》を引いた際も緑多色での運用をイメージし、赤緑は避けた方が良い。

 

以上がカラーリング毎の定義。
他にも構築できるデッキタイプは存在すると思うが、僕個人がノウハウを確立できていないので今回の記事では取り扱わない。

 

アーキタイプ間での格付け

カラーリング毎にtierで格付け。

 

tier1:白赤

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tier2:白黒、青赤、黒緑

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tier3:青緑

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tier4:青黒(コントロール)、黒赤(ミッドレンジ)

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tier5:白青、白緑、赤緑

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区分けが多くなってしまっているが、それだけ各アーキタイプの間に差がある認識。
まず白赤サイクリングが頭一つ抜けて強く、他を寄せ付けない。
次いで、白黒人間・青赤スペル・黒緑の3種がデッキ的に優れる。ただしこれらはデッキとしてのまとまりが重要で、関係性の低いカードを取り込んでしまうとデッキパワーが低下することから、完成度にムラが生じやすく、その点で白赤サイクリングに劣る。
tierが下がる毎にその傾向は強くなっていき、アーキタイプの弱さに繋がっていく。
そしてtier5の連中はムラどうこう以前にポテンシャルが低く、基本的にはドラフトしてはならないカラーリング。無理やりにでも舵を切って他の色に逃げるか、多色化して乗り切る必要がある。

 

アーキタイプ構築の解説とサンプルデッキ

アーキタイプの要点をサンプルリストを交えながら解説。
前述の通り、白青・白緑・赤緑に関しては「ドラフトすべきではない」と考えているので無し。

 

▼白赤サイクリング

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《天頂の閃光》がベストカードで、次いで《雄々しい救出者》《サヴァイの雷たてがみ》等の低コストクリーチャーがデッキパワーを引き上げるポイント。並大抵のレアに勝るカードパワー。参入動機を設ける場合はこれらが好ましい。

 

デッキをデザインする上でのポイントは主に3つ。

 

①土地の枚数

最低値は13枚。そこからデッキ構造に合わせて増量を検討する。

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サイクリングデッキは《罠の戦術家》《トゲマーモセット》《爬虫類の反射》などサイクリングでバリューを出せるカードが3マナに集中しており、ここが厚くなりがち。2マナ以下でストップすることが決して許されないほどに3マナが膨らんでしまった場合は14枚目以降を検討。

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《安堵の再会》がピック出来ているとマナフラッドが受けられるようになる。2枚以上は序盤の展開で邪魔になることもあるので1枚を推奨。
サイクリングは「手札の呪文を1ドローに変える」行為なので、繰り返していくとやがて土地にまみれていく。手札が土地だらけになった場合に希望が持てるか持てないかで雲泥の差があるため、このアーキタイプをドラフトする際1枚は確保したい。

 

②サイクリングの枚数

「デッキがどの程度サイクリングだけにマナを費やす行為を許容してくれるか」に関係。最もわかりやすいのは《天頂の閃光》で、これがフィニッシュ手段を担えるのであれば、極論《ドラニスの刺突者》と合わせての直接火力だけで勝利することも視野に入れられる。そうでない場合はある程度のダメージソースを採用する必要がある。

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完成度が高いものは時折バーンのような勝ち方をする

・土地
・ダメージソース
・除去
・サイクリング

が基本的なデッキ構造。個人的にはそれぞれ13:8:4:15程度の割合が好ましいと考えているが、ピック状況に左右されるため、数字にはこだわり過ぎず、あくまでピックを進める目安で考えると良い。またサイクリング枠はサイクリングコストが「1」か「2」で差が非常に大きい。「1」が複数枚ある手札は回転率が良く、土地1枚の初手もキープを検討できる。サイクリングコスト「1」のものは気持ち高めにピックしても良い。

 

③フィニッシュ手段

《天頂の閃光》が取れていればゴールが明確となり、指針を立てやすい。2枚以上あればサイクリングによってデッキを回転させ続け、それだけで勝利することも狙える。1枚ないし0枚の場合は主力である3マナ群(《トゲマーモセット》《罠の戦術家》《爬虫類の反射》)でのビートダウンが必要。この場合はダメージソースを多めに用意し、サイクリングの枚数を抑えて「普通に戦う」ことも視野に入れる必要あり。

 

サンプルリスト - 白赤サイクリング(7勝0敗)

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平均的な出来。2マナサイクリングが多いので少しテンポが悪いが、アーキタイプとして強いのでこのぐらいは問題視されない。《天頂の閃光》も取れており、3マナ域のダメージソースが安定していることから、《獰猛なゴリトラ》のようなデッキの趣旨にそぐわないノイズは採用していない。

 

サンプルリスト - 白赤サイクリング・相棒ザーダ(7勝1敗)

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サイクリング能力と相性の良い《黎明起こし、ザーダ》。起動型能力を持つパーマネントしかデッキに入れることができなくなり、主な弊害は《罠の戦術家》《トゲマーモセット》《爬虫類の反射》といったサイクリングデッキにおける主力クロックと除去である《平和な心》が使えなくなる点。

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このデッキは制約に掛からないダメージソースとして《不吉な海》を2枚採用できており、かつサイクリングが2マナのものに集中していることから、ザーダの価値が高くなることを期待して相棒とした。
サイクリングは基本白赤のカラーリングだが、《不吉な海》はサイクリングと非常に相性が良く、早期&複数回の起動が図れれば強力なカード。流れてきた場合は青を絡めた構造に変化させることを検討して良い。

 

▼白黒人間

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基本は面展開からの《揃った突撃》。
他のアーキタイプが面に広げることを得意としていないため、相対的に強い戦略。

 

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コモンだけで見ても面に広げるカードが多数存在しており、《揃った突撃》自体もコモン。コモンの中だけでデッキのギミックが完結しているのは非常に良い点。

 

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その上でアンコモンにはデッキのグレードを引き上げるものがいくつか存在。他のデッキでは強く使えないため、ポジションが取れていて、パックから出さえすれば集まってくる。

 

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その他、カードとしての人気は低いが人間デッキでは重宝するカード群。
ただしどれも入れ過ぎたくは無いので枚数には注意。大体1枚、多くても2枚に抑える。

 

要点は「どれだけシナジーに寄せ切ることができるか」。不純物が入れば入るほどデッキは弱くなる。「人間特化」というのが肝で、要は変容ギミックが受からない。基本は卓1人が前提で、参入後は覚悟を決めて関連パーツをかき集めていく事になる。

 

サンプルリスト - 白黒人間(7勝2敗)

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デッキ内のほぼ全てのカードを人間絡みで統一できており、強固。
《聖域封鎖》《想起の拠点》はピックできていないが、《将軍の執行官》《不吉な戦術》が2枚ずつあり、アンコモンによるアップグレードもできている。

 

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上記リストは《雄々しい救出者》と《罠の戦術家》のサイクリングギミックをハイブリットしている。
これらも人間であるためシナジーがあり、キーカードである《揃った突撃》もサイクリングを有していることから能力誘発に貢献する。

 

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《相互破壊》は癖の強い除去だが、《囁く兵団》やトークンギミックを用いる白黒人間であれば勝手が良い。他のデッキでは使いづらいので安くピックしやすく、2枚までは採用しても良い。

 

▼青赤スペル

サンプルリスト - 青赤スペル(7勝2敗)

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《禁じられた友情》+《心を一つに》のお手軽コンボは安く便利なパッケージ。

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墓地に呪文が溜まるので《呪文喰いクズリ》が二段攻撃を得やすく、《雷猛竜の襲撃》も扱いやすくなる。また盤面に除去リスクの低い非人間クリーチャーを用意できるので変容の受け入れまで達成。立ち上がりとしてこれ以上ない働きをする。

 

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あらゆる受けに貢献

 

これを土台とし、その上にどういった勝ち手段を載せていくかが肝要で、上記サンプルでは《霜のオオヤマネコ》《霜帳の奇襲》と言った「攻撃を押し通すカード」を多用。《心を一つに》で得たリソースを贅沢に使い倒す方針を取っている。本来は赤の除去を交えてもう少し力強く戦えるようにすることが好ましいが、ピックできなかったのでよりテンポ面を意識した。

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またドローソースを多用するデッキで注意が必要な点として「デッキ内のスペル濃度」が挙げられる。ドローソースはどこまでいっても「ドローするだけのカード」であり、デッキの呪文スロットに単純にドローソースを当て込むだけではマナフラッドを起こしやすくなる。1,2枚入れるだけならそれほど気にする必要はないが、上記リストは《心を一つに》が4枚あるため、デッキ内のスペル濃度が薄くならないように土地を15枚に切り詰め、《さまよう怪物、イダーロ》(逃れ得ぬ災厄、ゴジラ)のような高コストカードを排除し、マナフラッドを起こす前に勝ち切るプランを選択している。

 

サンプルリスト - 青赤スペル・相棒ルーツリー(7勝1敗)

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《呪文追い、ルーツリー》はリミテッドにおける相棒の中でも一際強力な部類。元々ハイランダーチックな構造になるリミテッドにおいては制約が緩い。

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《呪文追い、ルーツリー》のコピー先をイメージしてピックする。サンプルリストではピックできなかったので入っていないが、《火の予言》《安堵の再会》は是非ともほしく、入っているもので言えば《予期》や《交感の力》は安いカードなのでピックもしやすく噛み合いが良い。《疾風》も飛行クリーチャーが存在し軽く唱えられるのであればコピー対象として優れる。

 

サンプルリスト - 青赤スペル・相棒カヒーラ(7勝2敗)

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スペル軸によりある程度クリーチャー数を絞れる青赤に相棒として《孤児護り、カヒーラ》を組み込んだ形。

 

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構築では地味な扱いを受ける《孤児護り、カヒーラ》だが、ことリミテッドにおいてロード能力は強力。《禁じられた友情》+《心を一つに》パッケージは最序盤の展開に優れるものの中後半で引いてきた《禁じられた友情》に価値を見出せない点が問題となるが、確定ロードである《孤児護り、カヒーラ》が面戦略を確約してくれる。「絶対に引くことができるロード」の存在が呪文の価値を引き上げてくれる。

 

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《孤児護り、カヒーラ》は青でも赤でもないので採用するためにはマナサポートが必要不可欠だが、前述の通り白青のアーキタイプが弱過ぎるため《平穏な入り江》がピックしやすい。この理由からジェスカイの3色は比較的マナベースを強固にしやすい。

 

青赤スペルにおける注意点

弱いカードを使わないこと。主に以下の2枚。

 

《火傷吐きグレムリン

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確かにデッキにスペルは沢山入っているが、マナが余らない。マナは毎ターン限界まで使い切る。起動型能力が0マナなら素晴らしかったが、1マナ起動が致命的。何度もテストしたが常に弱かったので絶対に入れてはいけない。

 

パイロケラトプス》

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デッキに噛み合っているように思えるが、4ターン目というのが遅い。4ターン目にはある程度呪文を消費してしまっているし、このカードをプレイするターンは場のクリーチャーの攻撃が止まりがちであるため、せっかくテンポで押している展開に水を差してしまう。青赤スペルの4ターン目は押し込みに費やしたいターンなので方針に合わない。

 

▼黒緑

サンプルリスト - 黒緑タッチ白(7勝1敗)

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《葉状地のフェリダー》が初手だが、前述の通り白緑は弱いアーキタイプなので早い段階から多色化を検討し、青との天秤にかけた上で除去を多く取れた黒にシフト。

 

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長いレンジのゲームをするため、相手の脅威に対応する手段が重要。除去は言わずもがな、《記憶漏出》は『イコリア』ドラフトをする中で評価が高まった1枚。ハンデスにありがちな「打ち時を失って腐ってしまう問題」もサイクリングによって解決されている。「ドラフトにおける3マナハンデスはあまり強くない」は定説だが、サイクリングが付与されたことでカードの性質が劇的に変化しており、今セットのものはそれ単体で評価を改める必要がある。黒いコントロールであれば2枚まではほしい。

 

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またゲームが長引いた際それが有利に働く構造が必要不可欠。《野生肉の密猟者》は《頑丈なダンゴムシ》と合わせることで恒久的なブロッカー・ライフ・リソースをもたらし、対戦相手の除去にも耐性がつく。
《大いなるサンドワーム》は終盤のフィニッシャーだが、そうした高コストフィニッシャーにありがちな「重さゆえに序盤役割の無いカード」という問題点をサイクリングによって解消している。序盤にサイクリングした《大いなるサンドワーム》は《生存者の絆》で回収できるので、これも1枚あると便利。また《生存者の絆》は人間も回収対象に含めるとアドバンテージを獲得でき、この点に関しても《野生肉の密猟者》は勝手が良い。能力の性質上優先して除去されやすいため、回収対象にしやすい。

 

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《生存者の絆》をリソースカードとして運用するためにはデッキ内の人間クリーチャーカウントが重要。ただし後半旨味の無い人間(《謙虚な自然主義者》など)を拾っても意味が無いので、価値の出し方を意識しておく。上記サンプルの場合、《野生肉の密猟者》がピック出来なかったことと、《葉状地のフェリダー》がピック出来ていることを合わせて《慎重な認知眷者》をやや高めにピックした。《葉状地のフェリダー》のためだけに警戒クリーチャーをデッキに投じるのは抵抗があるが、2種あれば《苔毛のゴリアク》のようなカードも許容できる。

 

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また緑系のコントロールデッキは対アグロ(特に白赤)対策に《蜂蜜マンモス》が1枚はほしい。ただしこれはサイクリングを持つ《大いなるサンドワーム》と異なりかさばってしまうことが許されないので、1枚程度。優先し過ぎず、ただし軽視し過ぎずということで取るタイミングが難しいが、最終形には必要な1枚。1週したタイミングで取りたいカードなので、どのパックにいたかを覚えておくと良い。

 

▼青緑

サンプルリスト - 青緑変容(6勝3敗)
※最近やっていないので過去ドラフトしたものを再現

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クリーチャーを主体とし、変容・多色化のビートダウン戦略。20枚近いクリーチャーと、《充分な成長》のような強化呪文も採用し攻撃的な展開を目指す。
序盤の戦力として《渡る大角》を利用することになりやすく、バリューを出すために3色目以降のタッチが推奨される。基本は除去を追加できる黒か赤。レアがあるとより指針が立てやすい。

 

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デッキパワー底上げに役立つレア群

逆に言えば、ハイバリューなタッチカードが無ければ青緑だけでは価値を示しづらい。変容して殴るだけのコンセプトは除去リスクと真っ向勝負しなければならなくなるため。ゆえに何かしらの動機(大方レア)を携えて、デッキパワーを担保しての参入が好ましい。

 

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また青緑は変容元の確保が課題にある。《本質共生体》は基本的なスペックを兼ね備えつつ変容時のバリューがハッキリしておりベストだが、緑系の2マナ域としては高級品であるため、高めに取らなければ複数枚を確保するのは難しい。
《万能のブラッシュワグ》は悪くないが複数枚を採用しづらく、《微光クラゲ》はピックしやすいがこれも多投は好ましくなく、《両生共生体》はアンコモンのため出に左右されるなど、どれも問題点を有している。
低マナ域の確保に困った場合は《不思議な卵》を1枚まで採用しても良い。

 

完成した時・回った時のインパクトが強いが、「デッキパワーを担保するレアが取れるか」「変容元と変容先のバランス」「相手側の除去の有無に左右されやすい」などいくつかの不安定要素を抱えているため、tierは下げて設定している。

 

▼青黒

前述の通り「青黒コントロール」として構築する。

 

サンプルリスト - 青黒コントロール(6勝3敗)
※最近やっていないので過去ドラフトしたものを再現

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非常に青黒然としたコントロール
何かパンチの効いたレアがあれば7勝に到達したと思うが、コモン・アンコモンの組み合わせだけではイマイチ勝ち切れない。特に上位tierである白赤サイクリングの破壊力、白黒人間の面戦略、青赤スペルのアドバンテージ・テンポ戦略が厳しい。このデッキは6連勝の後3連敗。(アリーナリミテッドラダーの対戦相手は現在の成績を参照するため、ラウンド後半は上位アーキタイプとマッチングしがち)

 

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黒い除去による基盤の強さが売り。この点は黒緑と変わりない。
ここがtierの差を生む要因で、上記リストを見てもらっても分かると思うが要は「青である意味がない」。緑はクリーチャーの太さ、多色化によるデッキパワーの底上げ、《再来》という固有のパワーカードを用いることで確かな価値を示すことができるが、青には明確な利点が無い。もし青黒をドラフトするのであれば、通常「青を固めたい理由」が存在していることが求められる。

 

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わかりやすい動機

 

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上記リストでは赤をタッチして《ヤマオウム》を採用している。《靴かじり》《微光クラゲ》の2種変容元と相性が良く、前者は接死砲台、後者は2マナ1点マシンガン。今回はピックできていないが《泥棒カワウソ》なら相手プレイヤーにダメージを与える毎に1ドローのアドバンテージマシーン。(クリーチャーに与えた場合はドローできないので注意)
《ヤマオウム》は単体でも強力なカードだが、青や黒と組み合わせることでシナジーを発揮し、双方の受けがある青黒でのタッチは一際強力になる。

 

▼黒赤

前述の通り「黒赤ミッドレンジ」として構築する。

 

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黒赤のカラーリングの利点は「除去の豊富さ」。コモンからレアまで多量の除去が存在。どのアーキタイプをプレイするにあたっても変容によるイージーウィンを許さないために最低限の除去が必要不可欠で、赤黒はその点で全く困らない。

 

サンプルリスト - 黒赤ミッドレンジ(6勝3敗)

※最近やっていないので過去ドラフトしたものを再現

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除去ミッドレンジ。青緑変容のようなデッキに対しては強いが、デッキパワーの高い白赤サイクリング、面戦略の白黒人間、テンポ・アドバンテージに優れる青赤スペル、同系列でより骨太な黒緑など、上位tierに対して不利。下位tierは結局こうなってしまう。

 

サンプルリスト - 黒赤ミッドレンジ・相棒ジャイルーダ(7勝0敗)

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《深海の破滅、ジャイルーダ》は概ね普通にデッキに入れてしまう方が良いとされているが、初手付近でピック出来た場合は相棒としても良い。混成マナのため無限にバリエーションが存在するが、その中の一つに赤黒がある。

 

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赤と黒は偶数マナ域に優秀な除去があり、これが大きい。これまでいくつかのアーキタイプに触れてきたが、「除去がある」というだけで有利が取れるマッチアップが存在する。除去が強いのはいつものことだが、今セットは変容のごり押しが存在する手前より一層の安心感がある。

 

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《溶岩の海蛇》《聖域潰し》はジャイルーダ効果の「当たり要因」として強力で、かつサイクリングを持つことから複数枚をデッキに投じやすくヒット率の上昇に貢献する。《屍体の攪拌》はジャイルーダを再利用可能。ただし乱発するとジャイルーダの効果と合わせてライブラリーアウトする危険があるため、《溶岩の海蛇》を多投してジャイルーダプレイ時の殺傷力を上げておくか、1枚程度に抑えるのが無難。

 

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また赤黒と紹介しつつもサンプルリストは均等寄りの3色であるが、再現する際も3色での構築が推奨される。なぜなら、偶数縛りゆえ2色にまとめると弱いカードが多く入ってしまいやすくなるため。上記サンプルもピック中それに気づくのが遅れ後半無理矢理舵を切ったため弱いカードが多く入ってしまっているが、もう少し早く検討できれば強くまとめられたと思われる。前述したように混成マナゆえあらゆる組み合わせが想定でき、どの3色とするかはセンスが問われる。

 

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基本は他に取れたパワーカードで判断

 

総括

tier項でも述べたように、各アーキタイプの間でデッキパワーの差が大きい。勝率を重視する場合は上位tierに寄せたピックをするのが無難。中位~下位tierに手を出す際は明確な動機(大方レア)が担保されている場合に限定すると良い。「ポジションが良い」程度の感覚で手を出すと、後付けのレアが得られなかった場合簡単に負ける。白青や赤緑などはレアが得られても負ける。
またレアの種類によっては上位tierにタッチで組み込んでプレイした方が良いケースも多く、個人的な感想としては「いかに弱いアーキタイプを回避するか」が命題だと感じている。tier3以上は完成度次第で競り合える。

 

僕がミシック到達までにこなした10回のドラフトの成績は以下の通り。

 

7-1 白赤サイクリング(相棒:ザーダ)

5-3 青緑(タッチ黒)変容

7-0 白赤サイクリング

5-3 黒緑(タッチ白青黒)変容

5-3 ジェスカイコントロール(相棒:ルーツリー)

6-3 青赤(タッチ黒)スペル

7-1 黒緑(タッチ白)

7-1 青赤スペル(相棒:ルーツリー)

7-2 青赤スペル

 

中位以下のtierは意図的に回避している。有効な戦略を見出すことができればプレイする気も起きるが、相手にしてもまず負けないのでドラフトする気が起きない。そして負けの半分近くは白赤サイクリング。強過ぎる。

終期はカード供給が安定しやすい青赤スペルにピックを寄せていた。コモン中心のデッキタイプは再現性が高く信頼できる。1周しやすいカードを理解してからはさらに勝率が伸びたと思う。

 

最後に、勝率を上げるポイントは「負けやすいアーキタイプをプレイしない」「自分の型にハマるアーキタイプを見つけピックを寄せる」の2点。ドラフトを繰り返す中で勝ちパターンを見出していく事が大切。逆に負けパターンは回避する。

 

僕なりの解釈でザックリと解説したが、助けになれば幸い。