パイオニア環境分析7(2020/01/02〜2020/01/04)〜環境の固定化と攻略の糸口〜
Preliminary3本を対象。
目次
成績一覧
▼1/2実施
5-0
黒単アグロ
緑単ランプ
4-1
黒単アグロ
黒単アグロ
黒単アグロ
黒単アグロ
赤単アグロ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
緑単アグロ
緑単ランプ(タッチ赤)
ボロスフェザー
スゥルタイドレッジ
スゥルタイフラッシュ
3-2
黒単アグロ
赤単アグロ
赤単アグロ(タッチ《ボロスの魔除け》)
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
緑単アグロ
緑単アグロ
緑単ランプ
アゾリウススピリット
ボロスフェザー
ディミーアコントロール
イゼットフェニックス
イゼットフェニックス
イゼットフェニックス
バントスピリット
バントオーラ
スゥルタイドレッジ
ロータスコンボ
ロータスコンボ
▼1/3実施
5-0
黒単アグロ
ゴルガリ魂剥ぎ
4-1
黒単アグロ
黒単吸血鬼
赤単アグロ
赤単アグロ(タッチ白)
赤単ミッドレンジ
緑単エルフ
緑単ランプ
ディミーアコントロール
ラクドスミッドレンジ
グルールアグロ
スゥルタイドレッジ
ロータスコンボ
ロータスコンボ
3-2
黒単アグロ
黒単アグロ
黒単アグロ
黒単アグロ
黒単吸血鬼
赤単アグロ
赤単アグロ(タッチ黒)
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
緑単アグロ
緑単ランプ
アゾリウスミッドレンジ
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロール
ボロスフェザー
ラクドスミッドレンジ
ゴルガリミッドレンジ(昂揚型)
ゴルガリ魂剥ぎ
グルールアグロ
グリクシスミッドレンジ
ロータスコンボ
▼1/4実施
5-0
アゾリウスコントロール
イゼットハサミ
4-1
黒単アグロ
黒単アグロ
黒単アグロ
黒単吸血鬼
赤単アグロ
赤単ミッドレンジ
緑単ランプ
アゾリウスコントロール
アゾリウスコントロール
アブザンミッドレンジ
3-2
青単信心
青単信心
黒単アグロ
赤単ミッドレンジ
赤単ミッドレンジ
緑単アグロ
緑単ランプ
緑単ランプ
緑単ランプ
緑単信心
オルゾフゾンビラリー
ボロスフェザー
イゼットハサミ
イゼットハサミ
イゼットフェニックス
ゴルガリ鱗
ロータスコンボ
ロータスコンボ
黒単隆盛~メカニズムと対抗策~
前回(リンク)に引き続き黒アグロが好調。3日間の4-1以上42デッキ中12デッキ、上位の約3割を占める。
12(28.5%) 黒単系(黒単アグロ10、黒単吸血鬼2)
9(21.5%) 赤単系(赤単アグロ4、赤単ミッドレンジ5)
4(9.5%) 緑単ランプ
3(7%) アゾリウスコントロール
2(5%) スゥルタイドレッジ
2(5%) ロータスコンボ
1(2%) 緑単アグロ
1(2%) 緑単エルフ
1(2%) ボロスフェザー
1(2%) ディミーアコントロール
1(2%) イゼットハサミ
1(2%) ラクドスミッドレンジ
1(2%) ゴルガリ魂剥ぎ
1(2%) グルールアグロ
1(2%) アブザンミッドレンジ
1(2%) スゥルタイフラッシュ
数値でピンとこない場合は実際のトーナメントを思い浮かべてみてほしい。上位卓を見て回った時、3人に1人が同じデッキをプレイしていれば「多いな」「このデッキ勝ってるな」と感じるはず。次点が5人に1人で、その下が10人に1人、さらにその下は20人に1人と考えれば、3割の意味がわかってくる。
最近は自身でも黒単をプレイしているが、非常に安定したデッキで、軽いクロックにハンデス・除去と全てのデッキに勝ち得る要素を持ち合わせており、極端に苦手な相手が少ない。
特に除去を主体としたデッキには一際強く、クリーチャーのほとんどが墓地から戻る効果を有しており、アグロデッキにありながら除去が効きづらい。
《至高の評決》のような全体除去をプレイされた後でも、
エンドフェイズに《屑鉄場のたかり屋》起動
⇒自分ターンで攻撃
⇒《血に染まりし勇者》を場に戻す
⇒《どぶ骨》を回収しプレイ
一瞬でクロックを回復。これでは何度除去をプレイしてもいずれ力尽きてしまう。
このため黒単を意識する上では除去に追放効果を含むもの、もしくは墓地対策カードと組わせることで再利用を防ぐ必要があり、そうした戦略が"それなりに"有効であることを確認できた。
しかしながら、黒にはハンデスがあるためプレイする前に対処されてしまう事も多い。またプレイに成功しても、その結果ゲームが長引くと《ロークスワイン城》からもたらされる無尽蔵のアドバンテージが立ちはだかる。《変わり谷》もいずれは対処が必要で、また《変わり谷》を対処するためのカードは他の不死身クリーチャーには有効ではなかったりと、矛盾を孕んでしまう。
経験上、黒単の攻めを受けきることは非常に難しく、闇雲にトレードを繰り返すような戦略は得策ではない。
最も有効だと感じたのは"カードを消費しない"やり方。すなわち盤面構築。
黒単のクリーチャーの基本スタッツは2/1で、タフネス3を超えるクリーチャーが場に立つと攻撃できるクリーチャーに制約が加わり、《屑鉄場のたかり屋》はパワーが3あるが、タフネスが4を超え始めると除去をプレイすることでしか乗り越えられなくなる。
マナコストが2以下のものは《致命的な一押し》が通じるため、理想は「マナコスト3」かつ「タフネス4以上」。これを最も効率的に満たせるのが緑単アグロ。
ACG88 - Pioneer Preliminary(2020/1/2) 4-1 |
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メインボード | サイドボード |
クリーチャー(35) |
2 漁る軟泥 2 狩人狩り 2 形成師の聖域 2 墓掘りの檻 2 部族養い 3 英雄的介入 2 減衰球 |
1コストマナクリーチャーから繋ぐ3マナ域が豊富に用意されており、そのいずれもがタフネス4以上。
黒単は《致命的な一押し》を紛争させるのが難しく、その他の除去は2~3枚程度が主流なので、マスト除去を連打されるといずれ盤面は膠着してしまう。また《不屈の神ロナス》は黒単では原則対処できないため、パワー4以上を維持できる盤面を形成できた場合は一気に硬さが増す。
ただし飛行には脆いため、《悪ふざけの名人、ランクル》の攻撃を許す展開になってしまうとやや厳しい。《恋煩いの野獣》の出来事能力で生み出すトークンやマナクリーチャーを餌にダメージレースを仕掛け、素早く切り返していく必要あり。黒単は「タップ状態で場に出る」「ブロックできない」などのクリーチャーを多用しているため、一度殴られ出すと途端に脆くなる。
次に、黒単の構成的に刺さりやすい《再燃するフェニックス》を用いるデッキ、都合赤単ミッドレンジ。
nayaoka - Pioneer Preliminary(2020/1/2) 4-1 |
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メインボード | サイドボード |
クリーチャー(23) |
4 エルドラージの寸借者 3 チャンドラの敗北 2 削剥 3 減衰球 1 反逆の先導者、チャンドラ 2 目覚めた猛火、チャンドラ |
現状の黒単は《再燃するフェニックス》を単体で解決できるカードを用意していないため、2枚以上の除去を合わせ打つか、一度ブロックさせた後除去をプレイすることを迫られるため、どう転んでも損をしない。対黒単相手は最適な壁。
さらに《ゴブリンの鎖回し》も地上戦を主体とする黒単には極めて有効な1枚で、2/1スタッツを中心としている手前、場に出た時の能力で大方場が崩れる。前述の通り黒単のクリーチャーは場に戻る効果を持つが「強襲」や「絢爛」など攻撃をトリガーとするものが多いため、3/3先制攻撃で盤面を塞がれているとそれらの能力は起動しづらい。
膠着した盤面を《反逆の先導者、チャンドラ》《栄光をもたらすもの》が蹂躙。
フェニックスや鎖回し単体をフォーカスした場合は《ゲトの裏切り者、カリタス》が黒単側の突破口になり得るが、このカードは上記2種に弱く、失敗した場合敗北必至の裏目を抱えて戦うことになる。
3コスト以上のタフネス4以上が肝であるが、単純に3マナが厚いだけでは1マナからのビートダウンに押し切られてしまう。緑単アグロはマナクリーチャーを用いることで2ターン目から3マナ域を、赤単ミッドレンジは強力な制圧力を持つ3マナ・4マナで切り返すことでイニシアチブを掴んでいる。
また、まだ検証中の状態ではあるが、おそらくロータスコンボも黒アグロには有利なデッキ。ここまでで述べたように2/1がメインスタッツのデッキであるため、《樹上の草食獣》《願いのフェイ》のブロッカー2種がこれらを程よくキャッチ。《願いのフェイ》に関しては《悪ふざけの名人、ランクル》すら通さない。
またデッキのスピード的がロータスコンボの平均キルターンである5ターンと同じか少し遅いかであるため、ブロッカーのプレイで簡単にズラされてしまう。ブロッカーは当然除去対象となってしまうが、除去をプレイする=マナを消費しているためクリーチャーを展開できていない。ロータスコンボ側が必要としている「時間」を有効に稼ぐことができている。
また黒単側のメイン妨害手段であるハンデスはテンポを犠牲に1:1交換を行うだけなので、劇的ではない。コンボの軸である《睡蓮の原野》《演劇の舞台》そのものは対象に取ることができず、《森の占術》は選べるが、最序盤(後手なら1ターン目)しかタイミングが無く、持っていない可能性(最悪の場合は本体となる土地を持っている)もあるので、ハンデス側が不利な裏目を背負っている。
注目デッキ紹介
▼緑単ランプ(タッチ赤)
tyobe0440 - Pioneer Preliminary(2020/1/2) 4-1 |
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メインボード | サイドボード |
クリーチャー(23) |
4 ゴブリンの熟練扇動者 2 不屈の追跡者 2 墓掘りの檻 4 減衰球 2 コジレックの帰還 1 反逆の先導者、チャンドラ |
《約束の刻》型の緑単ランプから《茨の騎兵》を用いた緑単ランプへとシフトして以降、緑単ランプの進化は止まっており、同じようなリストが際限なくプレイされている。今回取り上げたタッチ赤のリストは久方ぶりの意欲作で、《コジレックの帰還》《龍王アタルカ》を用いることで対アグロの相性改善を図っている。
従来のランプは緑単色ゆえ横並べの戦略に弱く、上記の黒単アグロを相手取った際はそれがより顕著に表れ、ずらずらと並んだ2/1の群れに成すすべなく打ちのめされた。
赤をタッチすることで取り入れられた2種の呪文は逆に横並びの戦略に強く、ランプの弱点を補っている。代償として《光輝の泉》や《ウギンの聖域》と言ったバリューランドが失われているが、個人的には緑マナ15枚で無色土地を12枚も採用しているやり方の方が懐疑的であったので、赤マナと合わせて緑マナが増加していることはむしろ加点対象。
逆に気掛かりなのは、赤マナの数自体は10枚と少ないので、《砕骨の巨人》を序盤に唱えるのは難しいと思われるし、サイドボードの《ゴブリンの熟練扇動者》も然り。これは《減衰球》と合わせることでランプが最も苦手とするロータスコンボへのメタと思われるが、プレイできないのでは意味がない。《反逆の先導者、チャンドラ》に関してはもってのほかで、もはや上振れがどうとかそういう問題ではない。
《コジレックの帰還》を用いる関係で緑単の頃のリストに含まれていた《エルフの神秘家》と《ラノワールのエルフ》が無くなっており、序盤のアクションがやや少なくなっている。せっかく第1ターン目のマナ要求値が下がっているので、《森》を削って《奔放の神殿》や《隠れた茂み》を採用し赤マナを安定させるか、《コジレックの帰還》で生き残り、赤マナの発生源ともなるマナクリーチャー《森の女人象》の採用を検討しても良いかもしれない。
▼ゴルガリ魂剥ぎ
HamburgerJung - Pioneer Preliminary(2020/1/3) 5-0 |
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メインボード | サイドボード |
クリーチャー(30) |
2 漁る軟泥 2 再利用の賢者 4 思考囲い 3 致命的な一押し 2 最後の望み、リリアナ 2 肉儀場の叫び |
フォーマット発足直後に《守護フェリダー》が禁止されるなど、コンボデッキの存在が乏しいパイオニアにおいて、ロータスコンボ・スゥルタイドレッジと並びパイオニアのコンボ部門を支える存在。
《群れの結集》《忌まわしい回収》でデッキから、《ロッテスのトロール》《集団的蛮行》で手札から効果持ちのクリーチャー群を墓地へと送り込み、"究極完全態・《魂剥ぎ》"を生み出すのがコンセプト。このリストの最大値は到達を除く「接死・絆魂・トランプル・呪禁・速攻・警戒・破壊不能・二段攻撃」。《神聖な協力》のような特殊な手段でない限り対処は不可能。
《魂剥ぎ》の構築には二通りがあり、《発生の器》《ウルヴェンワルド横断》まで用いて全力で《魂剥ぎ》を掘り当てる「コンボ特化型」と、今回のリストのように単体でも戦力になるクリーチャーを多く含み、ノーマルに戦うことも視野に入れた「ミッドレンジ型」がある。《魂剥ぎ》の5-0は今回が初めてで、結果だけ見ればミッドレンジ型が有力か。
現状ほとんどのデッキがサイドボードに墓地対策を採用しているため、あまりコンボに執着し過ぎるとサイドボード後の戦いがシビアなものとなる。今回のリストは置き物対策を《再利用の賢者》2枚しか用意しておらず、サイドボード後はむしろミッドレンジ路線を主軸に戦おうとする意志が見て取れる。
主流デッキをプレイしていていざコンボを決められると"解なし"で詰んでしまうことも多く、思いのほか侮れない。墓地対策を受けるサイド後が鬼門となるが、今回のリストのように別軸のプランを主軸としておくやり方は非常にスマート。
雑感
徐々にメタが絞られつつあるが、環境初期のアゾリウスコントロールやイゼットフェニックスのように再び淘汰が行われる可能性は十分にあるので、引き続き情勢を見極めていく必要がある。
また絞られつつあるとは言えフォーマット全体が雑多であることに変わりはなく、根底には「デッキとしての地力の強さが」が求められているので、メタは移り変わるものと割り切り、じっくりと一つのデッキを練り上げていくのも手。