アリーナキューブドラフト(2022/01/06期)
メモ書きレベル。デカスロン決勝に向けてノウハウを溜めている。
ピック指針
土地から入るのはローバリュー
MOのキューブドラフトと異なり、フェッチランドが無いのでギルドランドのような土地をピックしても意外と広がりがなく、後々手損になる可能性が高い。ただしトライオームのみ例外。
赤単のような速度のあるアグロが強い(多い)
再現性は不明(認識が共通化されれば単色デッキは組みづらくなるため)だが、赤単崩れのアグロ(赤白や赤黒)まで含めれば一定数いそうなので、カウンターを含むコントロールはあまり構築したくない。
2022/01/09追記
極端なアグロよりも弱いカードの少ないミッドレンジの方が優れる。
上家の意向を無視しない
決め打ちは危険。上家が赤単ならその下で赤単をできる訳はない。
現状強アーキタイプがある程度ハッキリしそうな気配もあるが、強いカードの流れてくる色を柔軟に使えるような引き出しが求められる印象。
低マナ(2マナ以下)厚めのピックをする
2022/01/09追記
カウンターの入ったコントロールと早いアグロが多いので、構えられる前にダメージソースを展開する&最序盤からの並べ合いに対抗する2つの観点で2マナ以下のアクション数が重要。特にコントロールに対して裏目がないようにクリーチャーで揃えることが好ましい。
カード評価
体験ベース。誤評価を防ぐために、概ね強い・弱いだろうとされるものも、体感していないものは書かない。
強い
《食肉鉤虐殺事件》
他の全除去と異なりライフゲインがある。
《マナ形成のヘルカイト》
フィニッシュまでが早く、ライフを詰める速度が速い。アグロ~ミッドレンジ~コントロールの全てで優れていると感じる。
《反逆の先導者、チャンドラ》
ただ強だが、相性の悪い構造(カウンターの多いコントロールデッキ)にならないように注意。
《若葉のドライアド》
すごい。あとでかく。
《不屈の巡礼者、ゴロス》
サイズが良い。赤の火力は4点まで、クリーチャーもパワー5以上は少ない。
《死者の原野》
プール内に土地が多く、片側だけ合っているランドをピックして種類を散らしやすい。誘発条件達成が容易。
2022/01/09追記
原野自体は強いが、原野を活かすためのピックでデッキのカードが弱くなりがち。おそらく避けた方が良い。
以外とやる
《顔なしの工作員》
コントロールのようなクリーチャーを絞ったデッキで使うとある程度サーチを限定できるので、優良アドバンテージクリーチャーになる。
2022/01/09追記
やらない。
《真夜中の時計》
コントロールのリソース源。12個を溜める動きがデッキのゴールになる。
アンタップインの青マナである点も良く、ダブルシンボルの青カウンターを構えやすくなる。
《魅了された者、アリリオス》
高相性のカード(ブリンク系)がそれなりにある他、青デッキが盤面構築を行うにあたり非常に優れた性能。
弱い
A-《アールンドの天啓》
ナーフ後の天啓はカードパワーが低い。アンプレイアブルと化した可能性。
《溶岩震》
飛行に当たらない点がマイナス。弱いは言い過ぎかもしれないが、メイン採用は躊躇われる。
十種競技(デカスロン)
年末イベントとして開催された十種競技、またの名をデカスロン。
様々なフォーマットに触れ考える機会となり、非常にエンジョイできた。
①アルケミーBO1
1回目 アゾリウスコントロール 7-0
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月19日
1個目アルケミーBO1
1発7-0
このイベントのために真剣に調整したのでおススメです。 pic.twitter.com/fN2qNf48lN
アルケミーでの思考については以前記事にしたので、そちらを参照。
②『イニストラード:真夜中の狩り』3パック+『イニストラード:真紅の契り』3パック混合BO1シールド
1回目 6-3(白赤1-0 → 黒赤5-3)
2回目 7-1(青黒)
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月19日
2個目イニストラード混合シールド
1回目 黒赤 6-3
2回目 青黒 7-1
で抜け。7勝賭けで負けると気が遠くなる。 pic.twitter.com/1Jrjycd0UZ
未知のフォーマットだが、セットを跨いだ意外なシナジーがあったりして面白かった。今回のような計画されたものだけでなく、カオスドラフト or カオスシールドのようなフォーマットは定期的に開催してほしいなと思った。
③『イニストラード:真紅の契り』BO3ドラフト
1回目 5-0(青黒1-0 → 白黒4-0)
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月22日
4個目真紅の契りBO3ドラフト
1回目 5-0
メイン白黒
サイド青黒
でクリア。
ソリン感謝。 pic.twitter.com/UlB0nlmAZM
このセットは相当やり込んだ。記憶も新しく、戦略も固まっている。基本は白黒と青黒が強いので、ここに積極的に向かう。無理そうな時は流れの良いものを順当にこなし、運良く勝つことを願う。今回は環境最強の見解を持っている白黒を運良くドラフトでき、ボムレアのおまけ付きと言うことなし。
相手も強いデッキが多く思いのほか苦戦したが、なんとかクリア。
④新規プレイヤーデッキBO1
1回目 7-1(白緑5-1 + 青緑2-0)
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月21日
3個目新規プレイヤーデッキ
1回目
白緑 5-1
青緑 2-0
※途中でデッキ変更可能
で7-1でクリア
デッキごとの相性があるので今後メタゲーム(?)が変わる可能性があるけど、今はこの2つが強いと思います。 pic.twitter.com/EvsPvH3Brn
デッキ内にパワーカードが少ないので、ゲームが長期化しやすい。マナフラッド受けの多いデッキが良い。青緑と何度もマッチングし、強いと感じたので途中で乗り換えた。他には青黒か青赤か、とにかくドローソースのあるデッキが良いと思う。
⑤『ゼンディカーの夜明け』BO1・Botドラフト
1回目 白黒 2-2
2回目 青緑 0-3
3回目 黒赤 7-0
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月25日
6個目:botドラフトゼンディカーの夜明けBO1
1回目 白黒 2-2
2回目 青緑 0-3
3回目 黒赤 7-0
若干沼ったがなんとかクリア。
調べたらプレミアドラフトやってた当時も黒赤が強いっぽかった。他のアーキタイプの組み方を自分が理解していないだけかもしれないけど。 pic.twitter.com/H2HwKV2iDj
沼った。当時から苦手な環境だったのでとても苦労した。結果的には当時から唯一勝てていた黒赤をドラフトし、7-0した。《グロータグの虫捕り》《探検隊の勇者》らを《隠然たる襲撃》で押し込むビートダウン戦略が勝ちやすい。本当は白黒クレリックが強く、できればやりたいが、人気が高く難しい。今回のbotドラフトのAI評価も高かった。それでもいざできた時は強い。暇なのでクリア後にもう1度参加しプレイした際は白黒で7-1した。
暇だからデカスロンのZRNドラフトもっかいやって7-1
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月26日
白黒は強い(がbotの点数が高いためやりづらい pic.twitter.com/COKGKT7oX4
⑥ヒストリックの職工
1回目 赤単バーン 7-2
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月24日
5個目:ヒストリック職工(コモン+アンコモンのみ構築、一部禁止あり)
1回目 赤単バーン 7-2
クリア。
この日のために結構研究したので、割とオススメ。昂揚バージョンと、ノー昂揚バージョンがあり、甲乙つけ難い。抜けたのは昂揚無しの方です。 pic.twitter.com/I5NwG9hJG1
このイベントのために練り込んだ赤単バーンでクリア。始めはイゼットで考えていたが、マナベースが弱く、タップインが一々つらい。単色で強いデッキが作れればそれが一番良いと思い模索したところ、赤単にも《表現の反復》が3種もあることがわかった。(盛り)
流石に質は劣るが、アドバンテージ力の高いデッキが組めた。得たアドバンテージをわかりやすく勝ち筋に変換できる。
⑦ヒストリックBO1
1回目 黒単パラドックス 7-1
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月27日
7個目:ヒストリックBO1
黒単パラドックス
1回目 7-1
クリア
BO1で8連続後手だったけど、キルターン安定してていけた。
パクトコンボをずっと調整してたけど、面白そうなデッキできて、そっち使ってしまったw
ヒストリックBO1は相性差が激しいので、コピーする場合は覚悟を持って! pic.twitter.com/hsqrvb2FwZ
ディミーアパクトをずっと調整していた(40ゲームプレイした)が、直前に見つけたデッキが面白過ぎて急遽乗り換え。楽しいデッキだった。
パラドックス無限に勝ち筋あって楽しい
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月28日
カーンで貯蔵機ぐるぐるしたり、
アサーラックでダンジョン踏破しまくったり、
無限鍵で副陽したり、
旅人で無限にリミテッドクリーチャー並べたり。
ただ、おそらく強くはないw pic.twitter.com/4pq8xzivif
あらゆるデッキが混在する魔境なので、どんなデッキでも勝ち得るし、負け得る。弱いデッキを使わなければ何でもいいと思う。昔のモダンみたい。ただし、このデッキは決してベストデッキではない。楽しいだけ。
⑧アルケミー・シングルトンBO1
1回目 オルゾフミッドレンジ 4-3
2回目 オルゾフミッドレンジ 7-2
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月27日
8個目:アルケミーシングルトン
オルゾフコントロール
1回目 4-3
2回目 7-2
クリア
アグロ、特に白単をしばくために構築。先週の同フォーマットのイベントの際対戦相手の半分が白単だった。
ただ青系コントロールにはからっきしなので、相性差ゲーの覚悟は必要。 pic.twitter.com/k7iPOtEOwy
前週に同フォーマットでイベントを開催していた。30ゲームをこなし、半分を白単とマッチング。白単が最もデッキが強そうだったが、ミラー(しかもシングルトン)はやりたくなかったので、極端にメタったデッキを使用した。本番では全16回戦で5度マッチングし、全勝。
アグロ全般に勝てるように作ったつもりだったが、コントロールにも勝てるようにと色気を出した部分でよく負けた。どうせ不利なのでもっと割り切った構築にすれば良かった。
プレイした感想としては、ディミーアコントロールが強そうだと感じた。同じくコントロールであるイゼットが白単と並び人気がある。それもフィニッシャーがクリーチャーに寄るので、《船砕きの怪物》などを処理しやすい黒側に分があると思った。
が、もう2度とプレイしなさそうなフォーマットなので、クリア後にわざわざデッキを組んで挑む気にはなれない。また次の機会に。
⑨スタンダードBO3
1回目 イゼット天啓 5-0
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月30日
10個目:スタンダードBO3
イゼット天啓
1回目 5-0
クリア
緑単3回イゼット2回とマッチング。
このイベントに向けて無駄に調整してて、かなり自信あるのでおススメです。サイドボーディングも載せときます。(外人からよくDMで凸られるので英語です。) pic.twitter.com/sKuRDENHrd
イニストラードCS以降、明確に緑単が増え、白単が減った。メインボードの《燃えがら地獄》やサイドボードの《くすぶる卵》のような白単向けのメタカードを減らし、それぞれ《家の焼き払い》や《竜巻の召喚士》のような対緑単向けカードに置き換えている。
本番でも緑単と3度マッチングし、全勝した。あとは引き続きイゼットのミラーが多いので、そこにもぬかりなく。《否認》と《才能の試験》を分けているのは、自分の《才能の試験》が相手の《才能の試験》で抜かれてしまった際にカウンターが枯渇しないようにするため。ラダーで2度ほど発生したので、分けることにした。その後2度恩恵を受ける場面を確認できたため、引き続き採用している。
⑩『ストリクスヘイヴン:魔法学院』BO1・ターボドラフト
1回目 プリズマリタッチ緑 7-1
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月30日
9個目:ストリクスヘイヴンターボドラフト
1回目 プリズマリタッチ緑 7-1
クリア
全ての呪文が5マナ軽くなるという魔のフォーマット。1敗は2ターン目ヴェロマカス(白赤の学長)で無茶苦茶されてしまったw
あらゆるカードの価値観が変わるので、新鮮で楽しい。お祭り感ある。 pic.twitter.com/Tieop4npyC
異次元マジック。各カードの価値観が全く異なる。
《合格通知》はモックス・レインボー。《歯車の文書管理人》は1マナ4/5と規格外の生物。ストリクスヘイヴンではマナコストの大きな呪文が多いプリズマリがこのルールの恩恵を最も受けやすく、ほとんどミラーマッチしか発生しない。《否認》や《才能の試験》がプレイアブルとして飛び交う世界である。より完成度の高い「壊れたデッキ」を作り上げたものが勝ち抜ける。1度プレイしてお腹いっぱいになったので、識者で溢れた後の世界は体験していない。
楽しい企画だった。何もイベントがない時期を楽しませてくれた。素直に称賛。是非またやってほしい。決勝のキューブドラフトも非常に楽しみ。
10種を踏破するのに全14回挑戦した。おそらく比較的少ない方。全て一発クリアした猛者がいるか気になるところ。
アルケミー探検
12/10よりMTGアリーナに新フォーマット「アルケミー」が導入された。
MTGでは難しかった既存カードへのバランス調整(ナーフ・バフ)や、セットリリース後のカード追加が行われる、MTGアリーナ独自フォーマット。
明言されていないが、MTGアリーナ上ではスタンダードに取って代わるものとして確立されていくのではないかと思っている。
アルケミーに関する詳細は以下を参照。
このフォーマットはスタンダードを下地に、以下が追加要素となっている。
・いくつかのカードに対するバランス調整
・新カード追加
バランス調整は上方修正(バフ)もあるものの、メインは下方修正(ナーフ)。スタンダード環境で猛威を振るういくつかのカードに対し、修正が入っている。
直近のスタンダードを席捲しているイゼット天啓のキーカード《アールンドの天啓》は大幅パワーダウン。予顕してもコストが軽くならないので《感電の反復》と合わせてのコンボ成立ターンに遅れが生じる。たかが1マナされど1マナ。ビートダウンデッキを相手取る際、1ターンの遅れは致命的だ。
また予顕からのプレイでしかトークンが生まれなくなってしまったため、手札からプレイした際の効力が著しく低下した上に、《感電の反復》でコピーした場合にもトークンが出ない。上手く調整したもので、これではよくある追加ターンスペルの1枚に過ぎず、支配的な強さは無い。
次に《エシカの戦車》。戦場に出た際に生成されるトークンの数が1体になった代わりに、搭乗コストが2になった。初めて見た時は登場が2なら実はそれほど弱体化されていないのではないかと思ったが、全くそんなことは無く、出てきたトークンの方を処理されてしまうとコピー能力が活かしづらく、ただの機体に成り下がってしまう。他のトークン生成カードとセットで運用することが必要不可欠になってしまった。加えて、対戦相手が除去を構えていそうな展開であえて搭乗しないプレイを取ろうとした場合、2点のダメージしか出ないのでプレッシャーが大きく低下。しっかり弱体化している。
《黄金架のドラゴン》も変わり果てた姿で発見された。対象に取られた際に宝物を生成することができなくなったため、除去耐性が低下、というより無くなった。5ターン目にプレイしたドラゴンが《運命的不在》や《冥府の掌握》の前に無抵抗にやられていくのを見て悲しい気持ちになった。コントロールデッキでの運用は難しくなり、ビートダウンデッキにおけるごり押し担当に。
《光輝王の野心家》および《不詳の安息地》のナーフは一見するとそれほど変化が無いように見受けられるが、これも大きな違いがあり、《光輝王の野心家》は戦闘前にカウンターを載せられなくなったことから「同ターン中に対戦相手のクリーチャーサイズを越えることができず、攻撃できなくなる」ケースが増えた。ライフを攻めるスピードが低下するとゲームが間延びしていくため、ビートダウンデッキにおいては死活問題になり得る。《不詳の安息地》に関しても同様の問題が付きまとう。どうしてもパワー4の頃に比べてゲームターンが伸びてしまう。
このように、現スタンダードに存在する全デッキのキーカードが弱体化されている。特定のデッキをパワーダウンさせてバランスを取りたいというよりは、全く新しい選択肢に陽の目を当てたいという狙いが強いように見受けられた。
また他数枚のカードがバフ(および禁止カードをナーフして復活)されたが、いくら強化されたとはいえ環境をリードしている者達とはカードパワーに開きがあり過ぎるため、現状は戦いについていくことができない。環境のチャオズ。
「せっかくテコ入れするならもう少しやりようはないのか」が正直な感想だが、初めての取り組みということで色々難しいのかもしれない。これらも有効活用するすべがまだ発見されていないだけの可能性もある。今は見守るものとする。
チャオズを除くカードはどれも使えなくはないが、無理して使うほどかというと怪しいレベルまでパワーダウンしている。優先して使うべきカードから選択肢の一つへ。イゼットは天啓やドラゴン以外にもカードが充実しているので異なるデッキが構築できるし、白系アグロや緑系アグロも新規カードが追加されており、構築幅が広がった。
今後もこうした意向となるかはわからないが、少なくとも今時点ではアルケミーをスタンダードとは全く別のものとしたいように思える。単なる「調整版スタンダード」とする気はなさそうだ。
せっかくなので、ガチで取り組んでみた。イニストラードチャンピオンシップを終えたばかりで配信のネタにも困っていたのでちょうど良かった。普段は以下で基本毎日配信しているので。良かったら是非。
まず始めに試したのがアルケミー版イゼット天啓。
アルケミー面白いのできたから貼っときますhttps://t.co/PvyWUlRqWf pic.twitter.com/DviQyMNJwG
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月11日
個人的にイゼット天啓というデッキが好きで、スタンダードでも愛用してきた。スタンダードのものをベースに、新規カードの中からデッキに入れられそうなものをピックアップし、チューニング。
アルケミー要素その1、手札の3マナ以上のインスタント・ソーサリーを「永久に」コストダウンする。《公式発見》《アールンドの天啓》のような重いカードを軽くすることでコンボターンを早めたり、《予想外の授かり物》をコストダウンすることで最速4ターン目には《感電の反復》とのコンボが決まる他、《ゼロ除算》を1マナの万能対応呪文に変化させることができる。さらにこうして軽くなった呪文は《溺神の信奉者、リーア》のフラッシュバックにも対応するため、1度で2度美味しい。
アルケミー要素その2、呪文書からのドラフト。ドラフトカードは他にも何枚かあり、《呪い縛りの魔女》なんかも人気があるが、《書庫の鍵》はドラフトしてくるカードの質が異常に高い。中でも《時間のねじれ》《悪魔の教示者》《副陽の接近》はスタンダードを基盤としたフォーマットにおいて規格外の威力を発揮する。ドラフトのインパクトが大きい1枚だが、単純にマナブースト手段としても優秀で、天啓感電コンボやリーアとの相性が良く、デッキにフィットしている。《時間のねじれ》が公開された場合は宇宙へと突入。《感電の反復》とコンボした上でリーアによる使い回しが可能。例外なく対戦相手は爆発。
アルケミー要素その3、抽出。デッキからランダムに3枚の呪文を手札に加える。おまけで手札の呪文を全てコストダウン。(おまけにしては強過ぎる)
従来のドロー呪文と異なり、「呪文を」3枚加えるのがミソ。つまり土地を引くことが無いため、確実に手札の内容が濃くなる。例外として、両面カードは加わってしまうので《ジュワー島の撹乱》のようなカードの採用枚数には気を付ける必要がある。
また補足として、抽出は山札の内容を並び替えない仕様となっている。マリガンや占術で山札の底に送ったカードはそのままであるし、《書庫の鍵》で加えた《副陽の接近》をプレイした後に《公式発見》をプレイすると、山札の上から7枚のどこかに副陽があることは変わらない。(上7枚の中の呪文を抽出し、順番が早まるケースはある)
上記のデッキは非常に面白かったが、プレイしていく中でいくつかの問題点に気が付いた。まず、《アールンドの天啓》が強いマッチが少ない。
コントロール同系では《感電の反復》と合わせることで対処しづらい決定打としての強さは健在なのだが、黎明期にあたる現在のメタゲームではコントロールデッキはそう多くなく、バリューが発揮しづらい。またナーフの内容(予顕で軽くならない・予顕プレイ時しかトークンが出ない)が想像以上に重く、単純にカードが強くないと感じた。
一方《公式発見》は非常に強力で、得られるアドバンテージは圧倒的、加えた呪文も軽くなるのでその後のゲーム展開も円滑。
《公式発見》から《公式発見》へと繋がり、圧倒的な展開になる。その後はどのような手段でもゲームに蓋をできるので、ここで無理に天啓をプレイする必要は無いと感じた。3マナ程度まで軽くなったリーアが手札を1000枚もたらすので、《ゼロ除算》を無限回プレイして勝利できる。時には《書庫の鍵》から《時間のねじれ》や《副陽の接近》が得られるので、勝利手段に事欠かない。
次に疑いがかかったのが《霊媒者》。
始めの内は《ゼロ除算》《予想外の授かり物》《公式発見》などをコストダウンしキャッキャウフフと喜んでいたが、これらとセットにならない場面では驚くほど弱い。またコストダウンし甲斐のある《公式発見》とは一見相性が良いように見えるが、逆に《公式発見》で手札に加わってしまうと邪魔になるという二面性があることもわかった。《棘平原の危険》《ジュワー島の撹乱》《霊媒者》と手札に加わった時は泡を吹いて倒れた。
またアルケミーで人気のあるカードの一つに《審問官の隊長》があり、このカードが含まれるデッキでは例外なく《精鋭呪文縛り》が使われている。せっかく軽くした呪文を元に戻されてはやるせないし、こちらが地上の1/3を展開した返しに3/1の飛行が出てくるので絶望的に噛み合わない。手札から追放された後に《霊媒者》を引いてきた場合などは地獄である。《精鋭呪文縛り》は重いカードを追放するのが定石なので、この事態は頻発する傾向にある。
総じて、上記リストのイゼット天啓はイマイチ。楽しいデッキではあるが強くはなかった。残念。
次に着手したのがクレリック。
アルケミー探索隊初日終了。
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月10日
審問官の隊長がヤバいことはよく分かったので、初日はエスパークレリックで堪能。明日も昼ぐらいからやります。面白デッキ探し隊。https://t.co/PoCIsyRT6F pic.twitter.com/B7yByAtetP
先日のイニストラードチャンピオンシップの際チームメンバーが擦りに擦り、そして諦めたのがこのクレリックであるが、頓挫した要因であるイゼットが弱体化していることと、一つのカードの登場がこのデッキを一気に押し上げた。
「絶対に外れない中隊」こと《審問官の隊長》である。4マナで確実に2体のクリーチャーを展開できるので、《集合した中隊》に頭を抱えた全てのプレイヤーにおススメ。中隊デッキでクリーチャーを何枚入れるのが適正かといった議論も過去に何度も行われてきたが、これはテキストに「20枚以上入れろ、場に何体か並んでる想定ならその分さっぴけ」と書いてあるので非常に親切。20後半用意しておけば間違いなかろう。BO3でサイドボーディングする際は3マナ以下のクリーチャーを抜き過ぎないように注意。
このカード、クレリックなので全く違和感なくデッキに入れることができるし、《英雄たちの送り火》でもサーチ可能と至れり尽くせりである。
起動しているだけでどんどんカードが増えていく。完全に《出産の殻》である。誰が何と言おうと殻なんだ。
《審問官の隊長》が加わったクレリックに、併せて必ず採用したいカードがある。《玻璃池のミミック》だ。
隊長は3マナ以下のクリーチャーをランダムに抽出してくるが、このカードが選ばれた際は祭り。場の隊長をコピーして2度目の抽出、さらにミミックが捲れれば3度目、さらにミミックが捲れれば4度目。祭り。
土地スロットでクリーチャーを用意できるので20枚以上のカウントにも貢献と言うこと無し。スタンダードの頃はオルゾフで構築されていたが、このシナジーを考慮し、エスパーでの構築を推奨。《正義の戦乙女》や《スカイクレイブの亡霊》をコピーする動きも強力で、手出しも十分許容できる。《スカイクレイブの秘儀司祭、オラー》をコピーして自壊させ複数体を吊り上げる動きも玄人感が出ていい。いいよね…
ミミックや《さびれた浜》などの青マナが増加すると最序盤のアンタップイン率が低下しマナベースに無理が生じてしまうため、個人的には《生命の絆の僧侶》を取り払い黒マナの負荷を下げるアプローチを推奨したい。しかし《生命の絆の僧侶》の絡んだ動きが強力なのも理解できるので、爆発力か安定感かはお好みで。
黒マナ負荷軽減構築サンプル。BO1の場合は《団結の天使》を1枚《象徴学の教授》に代えて講義を使うと良い。
クレリックもアップデートしたよー pic.twitter.com/yzpvwASihw
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月11日
クレリックはデッキ強度が高く満足している。今後も調整し甲斐のあるデッキだと思う。
そしてこのデッキの調整を行う中で、相手にして強いと感じたデッキが赤単ドラゴン。自分では調整していないので、切札勝負くん(@SakeIzumo)のリストを拝借。
十種競技始めてみた。
— Masahide Moriyama (@SakeIzumo) 2021年12月19日
BO1アルケミーは赤単ドラゴンバーンで7勝。勝舞くんに成りきることができるからこのデッキ大好き! pic.twitter.com/j45ntjGjWd
《恐るべき仔竜》は本当に恐るべきカードで、特に除去が当てづらい先手時のマウント能力は圧倒的。《街裂きの暴君》《黄金架のドラゴン》《星山脈の業火》が立て続けに襲ってくる。イージーウィンが多いデッキであり、豪快。派手さが好きな人にはたまらないデッキだと思うので、おススメ。
《呪い縛りの魔女》《血塗られた刷毛》を使うミッドレンジデッキも人気のあるアーキタイプ。構築幅が広いので様々なバージョンがある。(黒単、吸血鬼etc..)
コンセプトが綺麗なデッキで可能性は感じるが、この手のボードコントロールデッキは青いコントロールデッキを苦手とする傾向があり、特に後述の《神聖な粛清》に致命的に弱い。メタゲーム次第といったところ。サンプルリストは詐称幼女(@sanetomi)から。
デカスロン、初日は両方とも完走。
— さねとみ (@sanetomi) 2021年12月19日
相棒置いておきます pic.twitter.com/fOaD3h2MNk
様々な体験を経て、環境で勝てそうなデッキを自分で構築するフェーズへ。単純なデッキパワーではクレリックが優れていると感じたが、徐々に流行し始め、ミラーマッチが多発。ミシック帯でラダーをしていると最もマッチングする。
白黒とエスパーが全てクレリック。3回に1回より多くマッチングする。
そこで注目したのが《神聖な粛清》。
《神聖な粛清》はこのクレリックに劇的な効果があり、同デッキがコントロールデッキへのメタとしている《英雄たちの送り火》《スカイクレイブの秘儀司祭、オラー》のどちらも意に介さない。その他、クレリック以外の《審問官の隊長》デッキや《血塗られた刷毛》デッキにも劇的で、環境の人気どころに刺さりやすい。
このカードを軸としたデッキ構築を行うにあたり、カードの性質がコントロール向きのカードであるため、組み合わせる色は青に。イゼット天啓で使っていて強いとわかっている《書庫の鍵》《溺神の信奉者、リーア》《公式発見》のパッケージを流用できるのも要因の一つ。
また白青には《日没を遅らせる者、テフェリー》という《書庫の鍵》と相性抜群のプレインズウォーカーがおり、噛み合いが良い。鍵を絡めてプレイすればわずか1マナで盤面に送り出せる。1度定着すれば毎ターン3マナを追加で使用可能。テフェリーが定着している状態であれば後出しの鍵を即座にアンタップでき、相乗効果がある。
《神聖な粛清》は環境に存在する多くのデッキに対し劇的である一方、コントロールのミラーマッチなどでは全く役に立たない。アルケミーにはこうした不要牌を「変換」できるカードがあり、《予想外の変換》は非常に優れたドロー呪文。《予想外の授かり物》のような手札入れ替えカードと異なり、複数枚無駄牌を引いてしまっている場面でも一括で変換可能。コントロールのミラーマッチにおける大きな手助けとなる。
《予想外の変換》の採用により、手札事故をある程度緩和できるようになったことから、極端な構築が可能になっている。白青のカラーリングは2マナに優秀なカードが少なく、《ドゥームスカール》の予顕は相対的に優れたアクション。しかし《神聖な粛清》を既に多く採用している手前、手札内での偏りを考えると全体除去を入れ過ぎるのは好ましくない。しかしここに「変換」のギミックを取り入れることで強気な枚数設定が可能となる。最序盤の安定的な動きと、ゲーム展開の高い再現性を担保しながら、事故解消の仕組みを内蔵できている。
ここにデッキの体をなすための細かな採択を加え、以下のデッキを構築。
理論ベースで組み上げたところ、これが上手くハマり、ミシック帯ラダーで高い勝率を収めることができた。
現在開催中の10種競技イベントに向けてBO1で調整していたのでラダーもBO1でこなしたが、先手が高い勝率を誇るBO1において8割を超える勝率を記録。動きの再現性の高さがそのまま勝率に結びついていると感じる。
本番のBO1イベントも7-0することができた。現在のメタゲームであれば自信を持っておススメできる。
10種競技
— kenta harane (@jspd_) 2021年12月19日
1個目アルケミーBO1
1発7-0
このイベントのために真剣に調整したのでおススメです。 pic.twitter.com/fN2qNf48lN
相性は赤単ドラゴンが先手後手でイーブン、コントロールミラーは相手の構成によりけりだが、不利がつくものもある。その他には基本有利で、特に対クレリックには無類の強さを誇る。1ゲームも負けたことが無いので、トップメタに強いのは魅力。良くも悪くもメタゲーム次第で、そもそもBO3を前提に見据えるならもっと他のデッキが優れている可能性もある。
結局ナーフされたカードは《黄金架のドラゴン》を除いてほとんど使われず、ごくまれに《アールンドの天啓》がプレイされる程度。基本は新規追加カードを上手く使うフォーマットになるだろうか。追加カードは環境を変えに来ている気概が伝わってきており、流石に強力なものが多い。
バランス調整は上記ページによれば「より頻繁に行い、このフォーマットの楽しさや変化の早さ、ダイナミックさを維持します。」とのことだが、これがいかほどのものであるかは明記されていない。ひとまずは事例待ち。イベントやラダーの結果が基になるかと思うので、まずはフォーマットの活性化が必要。
こっからはラフに感想とか
アルケミーをプレイした感想としては、「スタンダードチックなゲーム感ながら、スタンダードとはまるで異なるもの」といった感じ。MTGアリーナリリース以降は環境解明が極端に早くなり、解析され切った状態で1か月2か月と同じようなゲームをプレイし続けた結果、飽きが生じることが多かった。環境へのスパイスとしてはいいかもしれない。プロリーグがあった頃は全く同じカードプールで3回ほど大会があって「これ以上何をやらす気やねん」となっていた。
(今後どのくらいの頻度でバランス調整が入ったり、イベントが開催されたりするのかにもよる。紙のスタンダードとの関連性とか。)
ただし、懸念点もある。
1つは情報管理。《公式発見》は個人的に好きなカードだが、相手に使われると全く別の印象を持つ。今は勝ち負けが致命的になるシチュエーションが無いのでそれほど気にならないが、チャンピオンシップなど大きなイベントでプレイすることになった場合は「相手の手札に何枚ぐらいバフがかかってるカードがあるか」を記憶する必要が出てくる。《公式発見》を段階的にプレイすると「7枚中3枚は2バフで、3枚は1バフで、1枚はこのターン引いたカードで…」と複雑にいなっていき、さらに予顕されたカードもバフは引き継ぐので「予顕3枚の内1枚は0バフで、残り2枚は1バフか2バフかかってて…」とメチャクチャになっていく。この辺の情報はアリーナ上で記録されないので、現状はメモを取るしかない。デジタル化が進んだ結果アナログなやり方が求められている?そんなことってある?
2つ目はワイルドカードの消費量が跳ね上がることに関連した、ユーザーの定着について。今時点でもヒストリックなんかはこれが参入障壁になってプレイできていない層が一定数いると感じている。追加カードはレアだらけなので、一般ユーザーは深刻なワイルドカード不足に陥りそう。WotCからすれば課金を促す動機付けのつもりかもしれないが、マジックにはフォーマットが無限にある(もっと言えば別にマジック以外の遊びもある)ので、プレイしない択も取れる訳で、結果色んなフォーマットにプレイヤーが分散して1個1個が過疎ったりしないかっていう懸念。パイオニアとかそんな感じになってしまっているため。
始まったばかりなのでしばらくは暖かく見守っていく。ヒストリックでナーフが始まったあたりから「そのうちアリーナ上ではスタンダードが廃止されて新アリーナスタン的なのが始まりそう」とか言っていたら速攻で来てビックリした。
近年マジックの変化は著しい。様々なものが移り変わっていく。いい方向に向かっていくといいね。
『イニストラード:真紅の契り』BO1ドラフトコモンカード格付
メモ書き。随時更新。
色の強さ
色単体はあまり関係がなく、カラーリングが重視される気がしている。
以下のアーキタイプの強さ参照。
アーキタイプの強さ(2021/12/21更新)
まだ曖昧。青黒が強いということしか断定できず、それ以外は暫定の感覚ベース。
下位格のデッキも成立しないという訳ではなく、レアリティが高ければあり得るので、構築の難易度順ともいえる。
S 白黒(↑UP)
A 青黒
B 赤緑
C 白青 黒赤
D 白緑 青赤
E 黒緑
F 白赤 青緑
2021/12/21更新
白黒を単独Sランクに。別格。
評価基準
S 強い
A 強いがSには劣る
B 普通
C 普通だがデッキ次第な面もある
D デッキ次第では入る or 弱いが1枚程度なら許容
E デッキに入れてはいけない
白
S
なし
A+
A
2021/12/22更新
《ドラグスコルの歩兵》をBからAに格上げ。
B
C
2021/11/20更新
《慈愛の祖霊》をBからCに格下げ。
2021/11/20更新
《旅する聖職者》をDからCに格上げ。
D
2021/11/20更新
《不屈の意志》をCからDに格下げ。
2021/12/10更新
《民兵の結集者》をCからDに格下げ。
《ネベルガストの詐欺師》をEからDに格上げ。
E
青
S
なし
A-
2021/12/22更新
《残酷な目撃者》をAからA-に格下げ。
B
青のカウンター戦略が勝率を安定させやすいと思っているので、おそらく他より評価高め。狼男に弱いのがネックだが、それ以外には強く出ることができる。
C
評価が難しいカード群。どれもピック状況次第でB格、D格になり得る。濫用クリーチャーは青黒など生け贄の種が豊富なデッキでプレイすればB格。《貯蔵スカーブ》はその中でも回収し甲斐のある呪文が求められる。《悲惨な群れ》は3枚あればB、2枚ならCなど、変動する要素が多い。
2021/11/20更新
《鋼纏いの霊》をDからCに格上げ。
D
2021/11/20更新
《死への恐怖》をEからDに格上げ。
E
なし
黒
S
A
最大2枚。
B
C
デッキによって格が変動。
《悪運尽きた造反者》は濫用デッキで評価アップ。
《ほつれ服の世捨て人》《血に狂った社交家》は血トークンが安定して供給できるデッキで評価アップ。
D
2021/11/20更新
《不死なる悪意》をCからDに格下げ。
2021/12/22更新
《しつこい標本》をCからDに格下げ。
E
《不浄なる密集軍》はタフネス参照ギミックに組み込む場合のみD格。
赤
S
なし
A+
A
B
C
D
E
2021/12/10更新
《夜明けの戦闘員》をDからEに格下げ。
緑
S
なし
A
2021/11/20更新
《花の織り手》をA-からAに格上げ。
B
2021/12/10更新
《鉤手の船乗り》をCからBに格上げ。
C
D
E
2021/12/10更新
《押し潰す梢》をDからEに格下げ。
無色
S
なし
A
なし
B
今セットは色拘束が厳しいカードがいくつかあり、2色でも重宝するケースも多い。その他、ゲームを決定づけるレア・アンコモンも豊富にあるためタッチの価値が高く、普段より強い。
C
《進化する未開地》と同観点で、タッチの価値が高い。墓地追放もほどほどに使用機会がある。特に青や黒には効果的。
2021/11/20更新
《儀礼用ナイフ》をDからCに格上げ。
D
E
『イニストラード:真夜中の狩り』BO1ドラフトコモンカード格付
メモ。随時更新。
前提
BO3ドラフトとは焦点が異なるポイント。
- サイドボード用のカードは軒並みアンプレイアブル。
- 7勝デッキを目指す都合、強アーキタイプに強いカードを高評価、弱いカードを低評価。
- ある程度完成度の高いデッキ同士の対戦を想定。弱いデッキ同士の対戦で強いカードなどのシチュエーションは無視。
色の強さ(2021/10/12 更新)
青>白>黒>>>緑>赤
>2021/10/1 更新
青はどの色と合わせても良質のアーキタイプになる。(青黒S・青白A・青緑B・青赤C)
一方で、黒は青黒・白黒は優れるものの、黒赤・黒緑が大きく劣る。カード単品の評価は同程度であると思われるが、最終的な強さで差が出やすいので青が勝る。
>2021/10/12 更新
黒と白の格付けを入れ替え。
理由は下記の表の通り、白はどの色と組み合わせても青に劣らず良質なアーキタイプになるのに対し、黒は黒赤と黒緑が悪いので、白の方が勝るというのが現状の考え。
白 | 青 | 黒 | 赤 | 緑 | |
白 | - | A | A | C | B |
青 | A | - | S | C | B |
黒 | A | S | - | D | E |
赤 | C | C | D | - | E |
緑 | B | B | E | E | - |
アーキタイプの強さ(2021/10/12 更新)
S 青黒
A 白青 白黒
B 青緑 白緑
C 青赤 白赤(↑UP)
D 黒赤
E 黒緑 赤緑
>2021/10/11 更新
青緑をAからBに格下げ。白黒をBからAに格上げ。
青緑で必要なカードの強さが認知され始め(《風変わりな農夫》など)、強力なデッキをやや作りづらくなったため。
>2021/10/12 更新
白赤をDからCに格上げ。
白赤はほとんどならない分、いざなった時は卓の流れが非常に良く、質の良いカードでデッキを埋めやすいため、強くなりがち。青赤と同じことが言える。ただし積極的にやっても強くは無いので偏重は危険。
伴い、Dに該当するアーキタイプが無くなったので黒赤・黒緑・赤緑が1段階ずつ上げた。
評価基準
S 強い
A 強いけどSには劣る
B 普通
C 普通だけどBには劣る
D デッキ次第では入る
E デッキ次第では入るけどあまり良くはない
F デッキに入れてはいけない
上記に加え+や-が付いているのは、他の色の同格と比べると差があり、細かな差を表現するため。
白
S
序盤~終盤まで常にインパクトを与えられる。文句無しの一級品。
A
3枚ぐらい取っても問題ないが、2マナ程度で唱えてなんぼ、4マナで唱えると弱いカードなので、複数枚使う場合はマナカーブの良さを特に意識する。
B
《ガヴォニーの罠師》は2枚目以降は大きく評価を下げる。
そのため1枚目も優先し過ぎないように、他に取るものがないかをよく検討する。
>2021/9/29 更新
《蝋燭林の魔女》と《蝋燭罠》をAからBに格下げ。
C
《クラリオン吹きの聖戦士》は2枚目以降が一気に弱くなるので、1枚目を取る際も他に取るものがないかよく考える。
>2021/10/1 更新
《月皇の古参兵》をDからCに格上げ。白青・白黒の2つのアーキタイプで優れる。
D+
>2021/10/8 更新
《魂標グリフ》をDからD+に格上げ。
白青・白黒・青黒・青緑などの強力なアーキタイプに対し、他のコモン5マナ域と異なりプレイ時点で1アドバンテージを獲得できる見込みがある。《戦墓の大群》にはもちろん劣るが、近しい働きをすることがあり、他のD格よりも明確に上。
D
>2021/9/29 更新
《日金の連射》をCからDに格下げ。人気アーキタイプである青黒・白青・白黒にプレイしづらく、腐りやすい。2枚は厳禁、1枚も極力採用しない方が好ましい。
E
>2021/10/11 更新
《日金の連射》をDからEに格下げ。人気アーキタイプである青黒・白青・白黒にプレイしづらく、腐りやすい。BO1ドラフトではどんどん評価が下がっている。現状メインボードには1枚も入れたくない。
F
青
S+
群を抜いて強い。取ればとるだけ勝率が上がる。
S
強いが、青は4マナ域に強いカードが多いので、取り過ぎてしまわないように注意が必要。ただし複数枚取れることが嬉しいのに変わりはない。
A
なし
B+
>2021/10/12 更新
《回路切り替え》《溺死者の逆襲》をAからB+に格下げ。
過大評価だった。他のA格と比べ、あくまでサポートに過ぎない。
B
C
>2021/10/13 更新
《墓地への幽閉》は扱いに注意が必要で、白黒の生贄ギミックや青のバウンスなど、この環境はエンチャントによる長期的な除去の信頼性が薄い。《蝋燭罠》にも同じことが言える。《蠟燭罠》はエンチャント後即追放のパターンがあるためプレイでケアできるが、《墓地への幽閉》はそれが無いためデッキ構築・運用でケアする必要がある。
具体的には青赤のようなテンポデッキで「一時的な抑え込み」の感覚で使用すること。青黒で使う際も《有頂天の呼び覚ます者》《異形の隼》その他腐乱ギミックを中心としたテンポビート寄りの構築を行い、抑え込んでいる間にライフを取るぐらいの感覚で使用する。間違っても確定除去ではないので注意が必要。
D
E
>2021/10/13 更新
《またたかぬ観察者》をDからEに格下げ。
更新漏れ。評価自体は以前から低め。どのデッキでも使っても弱く、《影野獣の目撃》との組み合わせに注目した時期もあったが、結局このカード単体の弱さが克服できない。
F
>2021/9/29 更新
《異世界の凝視》をEからFに格下げ。ごく稀に入るが、レアケース過ぎてややこしくなるので降格。
>2021/10/8 更新
《鍵の秘密》をEからFに格下げ。ごく稀に入るが、レアケース過ぎてややこしくなるので降格。
黒
S
A+
A-
>2021/10/12 更新
《有頂天の呼び覚ます者》《オリヴィアの真夜中の待ち伏せ》をB+からA-に格上げ。
B+
B
>2021/9/29 更新
《オリヴィアの真夜中の待ち伏せ》をAからBに格下げ。
C
D
>2021/10/1 更新
《八方塞がり》をEからDに格上げ。
D-
>2021/10/11 更新
《モークラットのビヒモス》をDからD-に格下げ。
E
>2021/10/11 更新
《尊大な無法者》をDからEに格下げ。
F
赤
S
A
なし
B
C
>2021/10/12 更新
《祭り壊し》をDからCに格上げ。
D+
>2021/10/12 更新
《新生子の衝動》《献身的な精霊術士》《飢えた餌あさり》《馬上の戦慄騎士》をCからD+に格下げ。
D
>2021/10/12 更新
《ヴォルダーレンの刺剣士》《炎の供犠》をCからDに格下げ。
E
F
>2021/10/12 更新
《似姿焼き》《ファルケンラスの打ち抜く者》をEからFに格下げ。
緑
S
なし
A
B
C
D
E
>2021/9/29 更新
《旧き道の力》をDからEに格下げ。
F
>2021/10/12 更新
《窓を叩く》をEからFに格下げ。ごく稀に入るが、レアケース過ぎてややこしくなるので降格。
無色
S
なし
A
なし
B
なし
C
>2021/10/12 更新
《進化する未開地》をBからCに格下げ。
3色をドラフトするプレイヤーが一定数いるため、B評価で取ろうとするとそれなりに高い巡目でピックしなければならない。その手順では基本的に呪文の方が優先されるため、評価ダウン。自身が3色デッキをドラフトしている場合はA~Bで考える。
D
なし
E
F
ヒストリックの世界
先日、Wizards公式より移行シーズンの計画見直しが発表された。
コロナウイルスの世界的流行を受け、オフラインでのイベント開催が困難となったため、直近に予定されていた大型イベントを全てMTGアリーナで実施するとのこと。同期間中、開催が予定されているのは以下の4つ。
- プレイヤーズツアー2020シリーズ2(スタンダード)
- プレイヤーズツアー2020ファイナル(スタンダード)
- ミシックインビテーショナル(ヒストリック)
- 2020シーズン・グランドファイナル(フォーマット未定)
MTGアリーナを用いたオンラインイベントということで、同クライアントでプレイできないフォーマットは対象外となる。パイオニア・モダン・レガシー、それに現機能では実現が困難なブースタードラフトも対象から外れ、構築フォーマットのみでの実施となる。(特定の8人とドラフトする機能は現在のアリーナに備わっておらず、運用でカバーするやり方は様々なトラブルが予想される)
中でも一際目を引くのが、ミシックインビテーショナルの採用フォーマットになっている『ヒストリック』。このフォーマットはMTGアリーナ限定のフォーマットであり、これまではカジュアルフォーマットとして扱われてきた。
僕はこのフォーマットをつい先日まで全くプレイしたことが無かった。時間に比較的余裕のあるこのタイミングで未知のフォーマットに触れておくのも悪くないだろうと思い、嗜んでみることにした。今回の記事もその一環。ライトな内容なので、気軽に目を通してもらいたい。
目次
ヒストリック概要
ヒストリックはMTGアリーナにおいて2019年11月にスタートしたフォーマット。MTGアリーナリリース後初となるスタンダードのローテーション実施に合わせて施行された。当初の目的は「MTGアリーナにおいて使用不可能なカードが生まれてしまうことを防ぎ、ユーザーがコレクション内の全てのカードを使用できる環境を用意すること」。
ヒストリックにはローテーションが無く、MTGアリーナ実装以後のカードセット(『イクサラン』以降)が全て使用可能。例外として、一部禁止カードが存在し、また『ヒストリックアンソロジー』なる特殊な枠組みが存在し、Wizardsにより選定された『イクサラン』以前のカードもいくつか使用できる。
また今後「リマスター版」という呼称で『イクサラン』よりも前のカードセットの収録が行われることも明言されており、直近では『アモンケット』の追加が予告されている。
その他、アリーナ内で実施されるイベントの報酬として過去セットのカードが入手できることがある。
禁止カード
2020年5月現在で禁止されているカードは以下の通り。
- 《夏の帳》
- 《むかしむかし》
- 《王冠泥棒、オーコ》
- (BO1に限り)《運命のきずな》
基本的にはスタンダードと同様の禁止が施されている。(《死者の原野》は使用可)
《王冠泥棒、オーコ》はスタンダード禁止直後もヒストリックにおいてはしばらくの間プレイすることができたが、スタンダードとほとんど変わらない構成のシミックフードが環境を席捲し、程なくして禁止された。
ヒストリックアンソロジー
ヒストリックを単純な「旧スタンダード」としないために、Wizards側により選定され例外的に追加されたカード群が存在。現状3度(『ヒストリックアンソロジー』『ヒストリックアンソロジー2』『ヒストリックアンソロジー3』)に渡る追加が行われており、四半期に1度のリリースが明言されている。これにより現在使用可能なカードは以下の通り。
(※英語の画像が混ざってしまっているが、アリーナに実装されているイラストと同じ画像がこれしか無かったので留意いただきたい。)
無色
《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
白
《セラの高位僧》
《魂の管理人》
《スレイベンの守護者、サリア》
《ニクス毛の雄羊》
《一瞬の瞬き》
《機を見た援軍》
《鍛えられた鋼》
《イーオスのレインジャー》
《キンズベイルの騎兵》
《浄化の本殿》
《空位の玉座の印章》
青
《静かな旅立ち》
《白鳥の歌》
《宝物探し》
《メロウの騎兵》
《遠くの旋律》
《影武者》
《風見の本殿》
《容赦無い潮流》
黒
《墓所破り》
《チェイナーの布告》
《群れネズミ》
《脳蛆》
《無駄省き》
《ファイレクシアの闘技場》
《悪性の疫病》
《惑乱の死霊》
《ファイレクシアの抹消者》
《堕落の触手》
《夜陰の本殿》
《掘葬の儀式》
《宝石の手の汚染者》
赤
《竜使いののけ者》
《地盤改変》
《釜の悪鬼》
《ゴブリンの女看守》
《ゴブリンの廃墟飛ばし》
《激憤の本殿》
《宝石の手の焼却者》
《碑出告の第二の儀式》
《小悪魔の遊び》
緑
《エルフの幻想家》
《獣相のシャーマン》
《女魔術師の存在》
《祖先の仮面》
《土を食うもの》
《傲慢な完全者》
《生網の本殿》
《クローサの大牙獣》
《ワームの咆哮》
マルチ
《翻弄する魔道士》
《大渦の脈動》
《炎樹族の使者》
《聖遺の騎士》
《艦長シッセイ》
《ミラーリの目覚め》
アーティファクト
《羽ばたき飛行機械》
《精神石》
《漸増爆弾》
《ダークスティールの反応炉》
《アクローマの記念碑》
《白金の天使》
土地
《隔離されたステップ》
《孤立した砂州》
《やせた原野》
《忘れられた洞窟》
《平穏な茂み》
《ボジューカの沼》
《古代の聖塔》
《迷路の終わり》
《幽霊街》
パイオニアやモダン、はたまたレガシーのカードプールからも選出が行われている。パッと見ただけでは何を基準に選ばれているのかよくわからない。公式にある選出基準は以下の通り。
- ヒストリックを単なる「旧スタンダード+『エルドレインの王権』」にしないために、既存のデッキとは異なるデッキに活力を与えられるカードを探しました。
- 競技志向のプレイヤーのために新しい選択肢を用意するため、過去のスタンダードで活躍したカードを探しました。モダンなどのフォーマットで見受けられるカードも議題に挙がりました。
- ヒストリックで使えるカードの範囲を示すことが重要でした。そこで私たちは、広範囲のカードを扱うキューブ・ドラフトや統率者戦における人気カードも調べました。
- モダンやパイオニアで使用できるカードだけに限ることも検討しました。しかし結論として、ヒストリックをそれらと同じフォーマットにするつもりはありません。生半可に使用できるカードを定めても、それで突然フォーマットが完成するわけではありません。ヒストリックには、他のフォーマットのなりそこないではなく、独自のフォーマットとして発展してもらいたいと私たちは思っています。
"独自のフォーマットとして発展してもらいたい"の部分が重要に見える。似たり寄ったりなフォーマットを複製しても面白味がないと思うので、試み自体は良いと思う。
競技シーンでの活躍が望めないカードも散見されるが、中には高い影響力を持つものも存在。ある程度意図してアーキタイプを生み出そうとしているようだ。中身を追っていく。
部族
分かりやすいところで言えば、各種部族デッキ。
種族シナジーを形成する上でバリューとなるカードがいくつか追加されている。
ライフゲイン
スタンダードでもお馴染みの《癒し手の鷹》《アジャニの群れ仲間》パッケージと合わせて基盤が確立。直線的なアグロが台頭する環境であればその対抗馬として候補に上がる可能性がある。
黒単信心
『テーロス還魂記』に《アスフォデルの灰色商人》が再録されたこともあり、まとまりを見せてきた。《ファイレクシアの抹消者》がとにかくカッコよく、既に一定層から支持を得ている。
ギルドランド、M10ランド、占術ランド、トライランドなどヒストリックで使用可能な特殊地形にはそれなりの種類があるので、クアトロシンボルを踏まえた上での多色化も検討できるだろう。
《掘葬の儀式》のフラッシュバック能力により、山札を掘り下げる行為が蘇生対象+蘇生手段の両獲得に繋がり、動きが完結するようになった。
《鍛えられた鋼》の破壊力が凄まじい。パイオニアの《アーティファクトの魂込め》とはまた違った爆発力がある。ひとえにアーティファクトシナジーと言ってもフォーマット毎に特色が出るのは面白い。個人的には良い選定。
人間
《古代の聖塔》は多色のアグロデッキを構築する上で大きな助けとなり、《スレイベンの守護者、サリア》《翻弄する魔道士》はコントロールデッキやコンボデッキとの戦いを劇的に改善する。
その他ギミック
現状はまだデッキとしての成立が難しい印象だが、アーキタイプとして成立させ得るカード群なので、今後どこかのタイミングで日の目を浴びる可能性もある。
メタカード
またアーキタイプ用のカード以外にメタカードも収録されており、これらは《死者の原野》を睨んだものであると思われる。
《死者の原野》はスタンダード・パイオニアでは禁止指定を受けており、環境を破壊しかねないカードパワーを有する。ヒストリックにおいても一時は「一時停止カード」に指定されていた背景があり、既存のプールには存在しないメタカードを用意することで、一定の警戒レベルを敷く方針のようだ。
直近のメタゲーム
ヒストリックのメタゲームは"つい最近"定義された。それまでの間は「よく当たるデッキ」こそあれど、メタゲームと呼べるようなものは存在しなかった。前述のグルールアグロも「メッチャいるらしい」「マジで強い」と言った雰囲気情報だけで、全体のどのくらいを占めるだとか、そんな具体的なデータは無かった。
なぜか。答えはシンプルで、「メタゲームを形成するための材料となるような大会が無かったから」だ。ヒストリックの情報は驚くほど見つからない。いざ始めてみようと、適当なデッキリストをコピーするために普段利用しているサイトを探したところ、一般ユーザーの投稿デッキしか見当たらなかった。真にカジュアルな領域であったのだ。
MTGアリーナを用いた大会は原則スタンダードで開催され、ヒストリックを題材にしたトーナメントはほとんどない。そこについ先日、突如として、ビッグイベントである「ミシックインビテーショナル」の採用フォーマットとする旨がWizards公式より告知された。
これを受けてか、アメリカの人気ストリーマーであるJeff Hooglandが自身の主催する「Hooglandia Open」の第3回大会にてイベントを企画。参加者は200人を超え、僕の知るところでヒストリック史上初となる大型イベントとなった。(他にもあるかもしれないけど、知らないからごめん)
これでようやくメタゲームと呼べるものも出てくることだろう。当該のイベントの結果は以下の通り。
Hooglandia Open 3(Historic)
トップ8
1位 ナヤ・ウィノータ
2位 ナヤ・ウィノータ
3位 グルール・オボシュ
4位 ジャンド・サクリファイス
5位 ナヤ・ウィノータ
6位 ナヤ・ウィノータ
7位 ジェスカイ・ルーカ
8位 ナヤ・ウィノータ
4人 ジェスカイ・ルーカ
3人 ナヤ・ウィノータ
1人 青単テンポ
トップ32
3人 ナヤ・ウィノータ
2人 緑単ランプ
1人 ジェスカイ・ルーカ
1人 スゥルタイ・ストンピィ
1人 スゥルタイ・コントロール
1人 スゥルタイ・神託者コンボ
1人 ジャンド・アグロ
1人 ジャンド・サクリファイス
1人 グリクシス・ドレッジ
1人 ボロス・フェザー
1人 シミック・ネクサス
1人 白単ソウルシスターズ
1人 青単テンポ
情報元
トップ32以下は雑多なデッキが多くなるので割愛して話すが、上位は見ての通りナヤ・ウィノータとジェスカイ・ルーカの海。特にナヤ・ウィノータのパフォーマンスは圧倒的で、同大会におけるデッキ単位の勝率は70%を示した。
勝率2位のグルール・オボシュが69%なので「なんだ1%しか違わないじゃないか」と思ってしまうかもしれないが、「グルール・オボシュ」の使用者は3位に入賞した1名だけで、そのプレイヤー単独の成績を示している。3位のイゼット・アグロや4位のボロス・フェザーも同様。一方で「ナヤ・ウィノータ」は26名の使用者がおり、総合成績としては異常な値。同じく勝ち組とされた「ジェスカイ・ルーカ」は28名の使用者がいるが、勝率は15位の56%と低い。勝つ人間もいれば負ける人間もいるのでこの数値はむしろノーマルなもので、一方の「ナヤ・ウィノータ」は「使ったやつら皆が皆勝った」状態。圧倒的だ。
ナヤ・ウィノータ
僕は知る人ぞ知るウィノータ狂で、次期MRL参入に備えトップメタデッキの練習に精を出す一方、裏では全カラーリングのウィノータをテストするなどし、夜な夜な研究を行っていた。
ボロスウィノータ
— kenta harane (@jspd_) 2020年4月15日
1回の戦闘で複数回誘発できるウィノータをトークン系カードで暴れさせる(とりあえず鼓舞する隊長試してみて、弱かったら工作員ガチャに変更 pic.twitter.com/GhHWtBQBEr
ジェスカイも試してみたけど、やはりタップインが気になる。2と3は綺麗に動かないと4を置く隙が作れない。孵化/不和もタップイン多過ぎて打つ暇あらず。
— kenta harane (@jspd_) 2020年4月23日
2マナ3点と赤のおっちゃんで安定させた方が良さげ。おっちゃん1枚スクライかな。 pic.twitter.com/pIFsU3YE7z
ウィノータまぁまぁやれるようになったので、使いたい人はどうぞ。
— kenta harane (@jspd_) 2020年4月25日
ただ繊細さが必要なのでもうパチンコではない。 pic.twitter.com/J6yOcVLB6v
ウィノータ
— kenta harane (@jspd_) 2020年5月3日
別バージョンをテスト中 pic.twitter.com/v2gbPaQExt
俺の秘蔵(死蔵)の4Cウィノータが流出?! pic.twitter.com/zc52bxnzxh
— kenta harane (@jspd_) 2020年5月13日
何度だって適応してやる… pic.twitter.com/qVVHk4lOgD
— kenta harane (@jspd_) 2020年5月13日
もやしみたいなカード並べられても困る。80点は削る気持ち出してほしい。 pic.twitter.com/iWTyWUjIPp
— kenta harane (@jspd_) 2020年5月22日
— kenta harane (@jspd_) 2020年5月23日
そんなウィノータ狂いの僕からすると、ヒストリックのウィノータは実に最高だ。圧倒的スコアを収めたことからその強さが理由の一つに挙げられるのは間違いないが、グルーブ感・爽快感が最大のポイント。
ウィノータの能力は平たく言えば「デッキからめくれた人間を出す」なので、どんな人間クリーチャーを出せるかがデッキの価値を図る要素になる。スタンダードにおける"最強の人間"は《裏切りの工作員》であり、基本はこれを繰り出すデッキ。
一方のヒストリックにおいてはもう一人"最強の人間"候補が存在する。《アングラスの匪賊》。スタンダード時代は見向きもされず、7マナという重さはリミテッドですら敬遠されるレベルだったが、まともにプレイすることを考慮しない、山札から直接場に出すカードとしては非常に強力な能力を持つ。ウィノータの能力で場に出せば「8/8速攻」であり、更に一緒に攻撃しているクリーチャー達のパワーも倍になる。複数枚めくれた際のバリューも高く、2枚めくれれば4倍、3枚で8倍、4枚で16倍。ウィノータの能力を起動させる際は複数体のクリーチャーで攻撃を仕掛けるのが前提になってくるので、オーバーキルなど狙わず真面目にプレイした結果でも100点近い打点が出たりする。
追加の当たり要因として採用されるのが、スタンダードでも時折使用される《無傷のハクトス》。頭でっかちのスタッツは《アングラスの匪賊》と相性が良く、もしウィノータで匪賊とハクトスが揃えば、2体だけでも20点のダメージが叩き出せる。
ウィノータからの当たり要因として工作員を使った場合、最速で場に出すことができれば相手のパーマネントを奪い一方的な蹂躙を可能とするが、奪うパーマネントが明確でない状況ではバリューが一気に低下し、特にコントロール系のデッキには意味のない土地を1枚奪った返しに《空の粉砕》のような全体除去で対処されてしまうことも多かった。一方の匪賊は「効果発動ターン中に勝つ」ことを可能とするため、コンボの着地点としては最上級の成果が得られる仕組み。
上記ギミック自体はウィノータのカラーである白と赤のみで成立するが、今回成功を収めたのは「ナヤ」。増やした色である緑のカードは《ラノワールのエルフ》《獣相のシャーマン》の2種で、どちらもウィノータとの相性を評価して採用されている。(《集めるもの、ウモーリ》に関しては後述)
共に人間の種族を持たないため、ウィノータの起動要員として役立つ。特に《ラノワールのエルフ》はコンボターン短縮に貢献しながら、土地が伸び切りマナクリーチャーとしての役割を失った後でも起動要員としての役割が残せるのは大きい。同じくウィノータと相性の良い《軍勢の戦親分》を2ターン目に繰り出せるなど、非常にデッキとマッチしている。
《獣相のシャーマン》は明確にウィノータをネクストレベルに押し上げた1枚。というのも、ウィノータデッキ最大の課題は「ウィノータを引けた時と引けなかった時の動きに差があり過ぎる」ことであり、ウィノータが実質8枚になるこのカードの追加は革命的なアップデートだったと言える。
スタンダードでは《新生化》を用いることで同様に実質8枚体制を実現する構築も存在するが、デッキのカラーリングが4色になってしまうため安定せず、また《新生化》自体は2枚目以降にバリューが無く、事故要素にもなり得る。《獣相のシャーマン》は2枚目以降を自身の効果で処理してしまえるので、即効性の観点に目を瞑っても明確な上位互換だ。
そして今回結果を残したリストで個人的に最も優れていると感じたのが《古代の聖塔》を採用している点。
ヒストリック環境で多色化を図った場合、多くはギルドランド+M10ランドのマナベースになるが、3色デッキでこのマナベースを採用した上で《ラノワールのエルフ》を運用しようとすると、1ターン目のアンタップイン緑マナをあまり多く用意できない点がネックだった。特に当たり要因に《無傷のハクトス》を用意した場合《森》の採用は非常にリスク。
「1ターン目のアンタップイン緑マナ」及び「ハクトスを4ターン目にプレイ可能なマナベース」の観点で《古代の聖塔》を引っ張ってきたのは本当に頭が良い。天才。
更に《古代の聖塔》を用いる関係上デッキ内の呪文の大半をクリーチャーで占める必要が出てきた訳だが、ここに相棒として《集めるもの、ウモーリ》を収めるやり方が非常にスマート。
このウモーリは「条件が合ったから入れた相棒」というだけでなく、5ターン目にウィノータ+《軍勢の戦親分》のダブルアクションを可能にする他、7マナと重い《アングラスの匪賊》をプレイ可能なマナ域に落とし込むなど、明確な役割を持っている。土地25枚に4枚の《ラノワールのエルフ》とフラッドしやすい構造に4/5の高スタッツを初手時点でリソースとして確定できるのも評価ポイント。
ジェスカイ・ルーカ
現在のスタンダードシーンでも文句なしのtier1を張るジェスカイ・ルーカのヒストリックバージョン。追加要素には《不可解な終焉》《アズカンタの探索》《ウルザの後継、カーン》《ドミナリアの英雄、テフェリー》《運命のきずな》らがあるが、どれもメインギミックのおまけに過ぎず、デッキの基盤はスタンダードのものとなんら変わりない。それだけ強力なデッキタイプ。
ジェスカイルーカがスタンダードで圧倒的、かつヒストリックにも通用する要因として、「ほぼ全てのゲームレンジに対応できること」が上げられる。《空の粉砕》や《陽光の輝き》と言った全体除去により"面"の展開に対応でき、《銅纏いののけ者、ルーカ》からの《裏切りの工作員》により"個"の脅威にも対応可能。
《空を放浪するもの、ヨーリオン》を始めとしたリソースの獲得手段にも長け、豊富なプレインズウォーカーを擁することから中期~長期的なゲームプランも構築可能。
かと思えば《創案の火》から4ターン目時点でマウントを取る動きも備わっており、《サメ台風》と合わせて能動的な攻撃手段も兼ね揃えている。
サイドボード後はカウンターを採用する事でよりコントロールに寄せた戦い方に変化する選択肢もあり、出来ないことがほとんどない万能なデッキだ。カードプールが広がれば対処手段も増加するので、むしろ強化される傾向にある。2020年5月現在では一つ下の環境であるパイオニアでもtier1に食い込むパフォーマンスを発揮している。
余程のことが無い限り今後も高い影響力を誇るデッキだと思われるが、先日禁止カードの予告および相棒ルールに対するテコ入れが発表されたので、この内容次第では立ち位置が変化し得る。全フォーマット見ても、このデッキ以上にヨーリオンを強く使えているデッキは見当たらない。今は座して発表を待つ。
【お知らせ】来週の6月1日(日本時間該当日深夜)に最新の禁止制限告知が行われます。対象フォーマットはスタンダードおよびヒストリック、また「相棒」メカニズムについても対応を行う予定です。 https://t.co/FUohnn2Gm8
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) 2020年5月27日
グルール・オボシュ
マナクリーチャーによる1マナ⇒3マナジャンプをテーマに据えたグルールカラーのビートダウンデッキ。《獲物貫き、オボシュ》を相棒にすることで採用できない2マナ圏の動きをマナジャンプでカバーする、非常に効率的な作り。同アーキタイプはパイオニアでも活躍している。
緑のマナブーストから赤の攻撃的なクリーチャーへ。上記で軽く触れた《炎樹族の使者》を用いるグルールアグロは、《炎樹族の使者》を始めとし《探索する獣》や《エンバレスの宝剣》を用いるなど、むしろ偶数マナ域がキーとなっている節があるので、毛色が大きく異なる。
《ゴブリンの廃墟飛ばし》はキッカーコストを支払うことで4マナの動きを担う。最序盤の土地破壊は非常に強力で、このデッキであればマナクリーチャーを経由することで3ターン目には可能になる。先手でこの動きに成功すればマナ差は4:1。ゲームの決定打になりかねない。
同リストには《銅纏いののけ者、ルーカ》+《さまよう怪物、イダーロ》のコンボギミックが仕込まれており、ルーカのマイナス能力で3マナクリーチャーを対象に取ると必ず《さまよう怪物、イダーロ》が場に出る仕組みとなっている。8/8速攻トランプルはフィニッシャーとして申し分なく、僅か5マナでこれを繰り出せるのは面白い。手札に引いてしまった場合もサイクリングでデッキに戻せるので、シルバーバレットによるリスクを極少に抑えられている点も評価できる。
また《ラノワールのエルフ》や《金のガチョウ》と言ったマナクリーチャーもマイナス能力の対象とすることで戦力に変換できるので、このデッキのルーカは単純な5マナのフィニッシャーを採用するよりもバリューが高く、冴えたやり方。
同大会における使用者はたった一人で、その一人が3位入賞を果たしている。
上記ルール改定の内容次第ではあるが、今後広がりを見せる可能性がある。
ジャンド・サクリファイス
スタンダードでも活躍する同アーキタイプのヒストリックバージョン。《大釜の使い魔》+《魔女のかまど》のギミックを中心に、《死の飢えのタイタン、クロクサ》の決定力や《パンくずの道標》のアドバンテージ能力を据え、相棒に《夢の巣のルールス》を置くことで2マナ以下のパーマネントで構成をまとめている。
ヒストリックバージョンになることでの変化は《縫い師への供給者》の存在。これを《夢の巣のルールス》で使い回すことにより山札を掘り進め、《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《パンくずの道標》のパッケージに対するアプローチを強化。
また《タイタンたちの軛》は山札を掘るカードであると同時に《夢の巣のルールス》を使い回すためのカードでもある。
そうした肥えた墓地は《死の飢えのタイタン、クロクサ》脱出の種にもなり、デッキ全体が美しくシナジーしている。
海外の人気ストリーマーでありアリーナラダー上位の常連であるcrokeyzは直近でヒストリックをよくプレイしており、同デッキを高く評価していた。
Starting to really get to grips with Historic. 14-4 today with this Jund Lurrus and into the top 100 for the first time.
— Stephen Croke (@crokeyz) 2020年5月24日
The meta is developing:
Lukka
Winota
Field
Jund
RDW
Been most impressed by those 5 decks so far.
Decklist:https://t.co/WyRtZZn33l pic.twitter.com/CAHy01R6k8
ルールスが相棒ルール改定の煽りを受ける可能性が高いが、仮に相棒を諦めざるを得ない状況となっても、《波乱の悪魔》を用いる構造に変化させたり、ルールスそのものをメインデッキに組み込んでしまうようなやり方も考えられるので、今後も形を変えながら存続する可能性は高い。
青単テンポ
『イクサラン』期のスタンダード時代に存在した青単テンポ。カードのラインナップも当時とほとんど変わることは無く、追加されたカードも《塩水生まれの殺し屋》《厚かましい借り手》程度。変化が無さ過ぎて言及することがほとんどない。
とにもかくにも《執着的探訪》依存のデッキであり、デッキ最大の長所でもあり短所でもある。(引けた場合と引けなかった場合の差があまりに大きい)
同カードを引き入れた際の力は圧倒的で、これまでに紹介してきたハイパワーなデッキ群に肩を並べることができる。
また上記で触れたように6/1(月)に禁止改定及び相棒ルールの変更が発表されているため、影響を受けないことが予想される以上今後注目のアーキタイプ。他が弱体化することで相対的にポジションが上がる見込み。
今後について
Hooglandia Open 3はナヤ・ウィノータの圧倒的なパフォーマンスで幕を閉じたが、これにより環境定義が行われたため、メタゲームが進んでいく事が予想される。
例えば、ボロス・フェザーなどはウィノータに対し有効なデッキ。《無謀な怒り》は僅か1マナでウィノータを対処することができ、デッキのメインギミックでもあるためウィノータを見据えてデッキ構造を歪めている訳でも無く、「構造時点で強い」という理想的なメタが実現できている。
サイドボード後であれば、赤いデッキは《レッドキャップの乱闘》が採用可能。1マナを残しているだけで4マナという大振りのアクションを躊躇させることができ、実際に直撃した際はゲーム展開に大きな影響を与える。
赤くないデッキであればシンプルに《墓掘りの檻》なども有効で、こちらは同じくトップメタであるジェスカイ・ルーカにも効果が見込めることから、自身に被害が無いのであれば積極的に採用したい。
《墓掘りの檻》を使うデッキと言えば《願いのフェイ》を使用するデッキも候補に上がれる。例えばティムール・アドベンチャーであれば《厚かましい借り手》で時間を稼ぎながら《願いのフェイ》経由で《墓掘りの檻》にアクセスすることで、少なくともメインボード時点ではウィノータの能力を完封できる。
さて、このようにメタゲームが定義された後は考えることが多くあり、競技プレイヤーとしてはここからが楽しいところなのだが、何度か繰り返しているように、6/1(月)には禁止改定および相棒に関するルール変更が予告されている。
禁止改定に関しては、スタンダードと同タイミングで告知が行われることから、両フォーマットで高い影響力を持つ《創案の火》あたりが対象となるのではないかと睨んでいるが、蓋を開けてみなければわからない。
ウィノータに関しては上記の通りメタが強化されていけば相対的にポジションが落ちていくタイプのデッキだと思っているので、この段階での規制は早計な気もするが、対抗馬である《創案の火》を規制するのであればやむを得ないのかもしれない。
記事を書いている途中で禁止カード&ルール改定の予告が行われ、正直萎えたが、せっかく書いたので投稿する。「なぜ今」と思ったかもしれないが、僕が一番思っている。別の意味で。
『イコリア』ドラフト備忘録
『イコリア』ドラフトが最高に面白い。最近は暇さえあればプレイしてしまっている。
次期シーズンのマジック・ライバルズ・リーグに招待されているのでラダーを頑張る意味はない(ミシックインビテーショナル『ゼンディカーの夜明け』の参加権を持っている)のだが、無駄に2か月連続でミシックに到達した。
入る意味なかったけど、リミテはあんまりランク下がらず1200位以内だった。人増えてるけど、構築に比べれば楽園であることに変わりはないのかな。 pic.twitter.com/C5JxWIJXrT
— kenta harane (@jspd_) 2020年4月30日
イコリアドラフトでミシック
— kenta harane (@jspd_) 2020年5月8日
なんか連携うまくいってないっぽくてデータ全部取れてない。untapped側のサーバーが落ちてたんかな。 pic.twitter.com/TDYT91AWmK
環境の仕様に慣れたこともあり5月は特に調子が良く、約10回のドラフトでミシックに到達。勝率は78%を記録した。
『ラヴニカの献身』の頃に書いたリミテッド記事が未だ一定数アクセスがあることがわかり、どうやらアリーナのリミテッドラダーが当該のセットになるタイミングで需要が生じているようだった。せっかくなので、今回は『イコリア』版の記録を残しておこうと思う。
またあらかじめ言っておきたいことが一点。
今セットは人によってアーキタイプ定義やカード評価の解釈が大きく異なる。下記は原根個人の解釈によるもので、知見の一つとして目を通してもらえれば幸い。他にもリミテッド記事もちらほら出ているようなので、興味のある人は探してみてほしい。
目次
環境定義
3色のマルチレアやトライランドの存在から対抗3色のデッキ構築を求められているように感じるかもしれないが、そんなことはない。基本は2色、必要に応じて多色化を検討する程度で、むやみやたらな多色化は推奨されない。なぜなら、特殊地形を始めとするマナベースの確保に手順を要する関係上、相対的にデッキパワーが低下してしまうため。皆が皆3色デッキを目指し、マナベースの成立に手順を費やすのであれば条件は同じだが、2色でも十分強力なデッキを構築できる(むしろ2色の方が強いことの方が多い)ため、余計な手順を費やした分だけデッキパワーが下がってしまう恐れがある。上記レアのような「多色化による明確なバリュー」を担保できた際など、必要に応じて検討する。
サンプルリスト - ジェスカイコントロール(7勝2敗)
逆に、緑ベースの変容デッキは積極的な多色化を検討したい。《ファーティリド》《渡る大角》《彼方見》等、変容ギミックを構築するカード群がマナサポートを兼ねており、単純な変容シナジーだけでなく多色化のバリューを兼ねたいため。
上記前提の元、各カラーリングのアーキタイプを整理する。最近のセットは当該カラーのマルチアンコモン・レアを見れば、その色がやりたいことが書いてあるので親切。
▼白青 - 飛行ビート
古来より伝わる飛行戦略。地上を固め、飛行で殴る。
至ってシンプルなコンセプトで、大抵のセットではそれなりに戦えるが、今セットの白青飛行は弱い。飛行クリーチャーの質が低く、除去が豊富な環境であるためそれらを守りづらい。総じて「飛行クリーチャーに寄せるバリューがそれほど大きくない」。
▼白黒 - 人間
「完成してしまえば強い」アーキタイプ。逆に中途半端な作りになってしまうと弱い。ハイリスクハイリターン。
デッキ作成に求められるパーツが限定されており、余分なカードが入り出すと途端にデッキパワーが落ちていく。ほとんどが専用パーツなのでポジションさえ取れていればカードは集まりやすいが、パックから出るかどうかの運に左右されやすく、万が一卓に2人以上できてしまった場合は概ねアウト。
▼白赤 - サイクリング
環境最強アーキタイプ。《天頂の閃光》のカードパワーが凄まじく、2020年5月現在のスタンダードシーンでもtier1を張るレベルにある。
今セットのサイクリングカードは一部を除きサイクリングコストが無色であるため、色の合っていないサイクリングカードもピックすることができ、キーカードさえ確保できていれば卓に2人できてしまっても十分な量プレイアブルを確保できる。白黒人間と異なり崩れの形でも強さを保てるのが優位点。
▼白緑 - 警戒
警戒自体は単なるキーワード能力に過ぎず、「警戒を持つクリーチャーにうんぬんかんぬん」と書かれたカードで役割を付していく事になるが、それはすなわち"特定のカードに役割が集中し除去のリスクが高い"ということ。
今セットはコモンの除去が豊富にあり、除去リスクの高さはアーキタイプの弱さに直結する。
大方《堅実な立ち位置》を用いたブチ切れ戦略になりがち。もちろん弱い。4勝御の字。
▼青黒 - 瞬速
挙げはしたものの、「瞬速」というアーキタイプは成立しない。瞬速に寄せるバリューがほとんど存在せず、レアの《滑りかすれ》はハイバリューだが、仮にこれをファーストピックできたとしてもその能力を使い倒せるほど瞬速カードがセット内に存在しない。
青黒は従来のリミテッドよろしく除去とカウンターで立ち回る「青黒コントロール」として構築することになる。
▼青赤 - スペル
非クリーチャー呪文(スペル)を主体とするカラーリング。キーカードがコモンに集中しており、アーキタイプ参入の際の成功率・再現性が共に高い。アンコモン以上のレアリティはデッキを単純強化していく位置付け。最低限のデッキパワーが担保されやすいのが魅力のアーキタイプ。勝率も安定しやすい。
▼青緑 - 変容
青緑には《万能のブラッシュワグ》《本質共生体》《微光クラゲ》等優秀な変容元クリーチャーが揃っており、これに《渡る大角》《夢尾の鷺》他上記アンコモンを変容するビートダウン。
同じく変容を多用する黒緑が除去を扱いやすいのに対し、青緑はテンポに優れる。しかし、前述の通りセット内の除去が豊富であり、リスクの観点から黒緑よりも劣ると考えている。
▼黒赤 - 威迫
テーマは威迫だが、威迫に寄せることで得られるバリューがアンコモン以上にしか存在せず、レアリティに大きく依存。
《一時的な連帯》はコモンだが、カードの強さは《怪物の兵器化》の有無で大きく変化。結局のところレアリティ依存となってしまう。
アーキタイプを意識していても関連したカードが集まらず、結果的に除去+クリーチャーのデッキになってしまう事が多い。大方「黒赤ミッドレンジ」、たまに「黒赤威迫」になる。完成された黒赤威迫は非常に強力だが、アンコモンだらけの再現性が極めて低いデッキになりがちのため、基本はミッドレンジで考える。
▼黒緑 - 墓地活用
従来の黒緑よろしくボードコントロールのカラーリング。
一つ一つのカードが骨太で、緑が絡んでいるため多色化も容易、他色のパワーカードを取り込むことでデッキパワーの底上げが図れる。黒い除去を扱えることで対応力も高く、重いデッキの中では環境一の力を持つアーキタイプ。
今回はここに墓地肥やし+それを活用するカードが多く存在。特筆すべきは《再来》の強さで、これが分かりやすい入り口となる。
▼赤緑 - トランプル
白緑警戒同様キーワード能力を参照するアーキタイプだが、弱い。白青飛行と合わせて環境ワーストの双肩。両者に共通して言えるのは「そのカラーリングを取ることで得られるバリューが無いに等しい」こと。
唯一、《クオーツウッドの壊し屋》は極めて強力なレアだが、「赤が濃い赤緑のレア」というせいで評価が下がってしまう程にデッドカラー。《クオーツウッドの壊し屋》を引いた際も緑多色での運用をイメージし、赤緑は避けた方が良い。
以上がカラーリング毎の定義。
他にも構築できるデッキタイプは存在すると思うが、僕個人がノウハウを確立できていないので今回の記事では取り扱わない。
アーキタイプ間での格付け
カラーリング毎にtierで格付け。
tier1:白赤
tier2:白黒、青赤、黒緑
tier3:青緑
tier4:青黒(コントロール)、黒赤(ミッドレンジ)
tier5:白青、白緑、赤緑
区分けが多くなってしまっているが、それだけ各アーキタイプの間に差がある認識。
まず白赤サイクリングが頭一つ抜けて強く、他を寄せ付けない。
次いで、白黒人間・青赤スペル・黒緑の3種がデッキ的に優れる。ただしこれらはデッキとしてのまとまりが重要で、関係性の低いカードを取り込んでしまうとデッキパワーが低下することから、完成度にムラが生じやすく、その点で白赤サイクリングに劣る。
tierが下がる毎にその傾向は強くなっていき、アーキタイプの弱さに繋がっていく。
そしてtier5の連中はムラどうこう以前にポテンシャルが低く、基本的にはドラフトしてはならないカラーリング。無理やりにでも舵を切って他の色に逃げるか、多色化して乗り切る必要がある。
各アーキタイプ構築の解説とサンプルデッキ
各アーキタイプの要点をサンプルリストを交えながら解説。
前述の通り、白青・白緑・赤緑に関しては「ドラフトすべきではない」と考えているので無し。
▼白赤サイクリング
《天頂の閃光》がベストカードで、次いで《雄々しい救出者》《サヴァイの雷たてがみ》等の低コストクリーチャーがデッキパワーを引き上げるポイント。並大抵のレアに勝るカードパワー。参入動機を設ける場合はこれらが好ましい。
デッキをデザインする上でのポイントは主に3つ。
①土地の枚数
最低値は13枚。そこからデッキ構造に合わせて増量を検討する。
サイクリングデッキは《罠の戦術家》《トゲマーモセット》《爬虫類の反射》などサイクリングでバリューを出せるカードが3マナに集中しており、ここが厚くなりがち。2マナ以下でストップすることが決して許されないほどに3マナが膨らんでしまった場合は14枚目以降を検討。
《安堵の再会》がピック出来ているとマナフラッドが受けられるようになる。2枚以上は序盤の展開で邪魔になることもあるので1枚を推奨。
サイクリングは「手札の呪文を1ドローに変える」行為なので、繰り返していくとやがて土地にまみれていく。手札が土地だらけになった場合に希望が持てるか持てないかで雲泥の差があるため、このアーキタイプをドラフトする際1枚は確保したい。
②サイクリングの枚数
「デッキがどの程度サイクリングだけにマナを費やす行為を許容してくれるか」に関係。最もわかりやすいのは《天頂の閃光》で、これがフィニッシュ手段を担えるのであれば、極論《ドラニスの刺突者》と合わせての直接火力だけで勝利することも視野に入れられる。そうでない場合はある程度のダメージソースを採用する必要がある。
・土地
・ダメージソース
・除去
・サイクリング
が基本的なデッキ構造。個人的にはそれぞれ13:8:4:15程度の割合が好ましいと考えているが、ピック状況に左右されるため、数字にはこだわり過ぎず、あくまでピックを進める目安で考えると良い。またサイクリング枠はサイクリングコストが「1」か「2」で差が非常に大きい。「1」が複数枚ある手札は回転率が良く、土地1枚の初手もキープを検討できる。サイクリングコスト「1」のものは気持ち高めにピックしても良い。
③フィニッシュ手段
《天頂の閃光》が取れていればゴールが明確となり、指針を立てやすい。2枚以上あればサイクリングによってデッキを回転させ続け、それだけで勝利することも狙える。1枚ないし0枚の場合は主力である3マナ群(《トゲマーモセット》《罠の戦術家》《爬虫類の反射》)でのビートダウンが必要。この場合はダメージソースを多めに用意し、サイクリングの枚数を抑えて「普通に戦う」ことも視野に入れる必要あり。
サンプルリスト - 白赤サイクリング(7勝0敗)
平均的な出来。2マナサイクリングが多いので少しテンポが悪いが、アーキタイプとして強いのでこのぐらいは問題視されない。《天頂の閃光》も取れており、3マナ域のダメージソースが安定していることから、《獰猛なゴリトラ》のようなデッキの趣旨にそぐわないノイズは採用していない。
サンプルリスト - 白赤サイクリング・相棒ザーダ(7勝1敗)
サイクリング能力と相性の良い《黎明起こし、ザーダ》。起動型能力を持つパーマネントしかデッキに入れることができなくなり、主な弊害は《罠の戦術家》《トゲマーモセット》《爬虫類の反射》といったサイクリングデッキにおける主力クロックと除去である《平和な心》が使えなくなる点。
このデッキは制約に掛からないダメージソースとして《不吉な海》を2枚採用できており、かつサイクリングが2マナのものに集中していることから、ザーダの価値が高くなることを期待して相棒とした。
サイクリングは基本白赤のカラーリングだが、《不吉な海》はサイクリングと非常に相性が良く、早期&複数回の起動が図れれば強力なカード。流れてきた場合は青を絡めた構造に変化させることを検討して良い。
▼白黒人間
基本は面展開からの《揃った突撃》。
他のアーキタイプが面に広げることを得意としていないため、相対的に強い戦略。
コモンだけで見ても面に広げるカードが多数存在しており、《揃った突撃》自体もコモン。コモンの中だけでデッキのギミックが完結しているのは非常に良い点。
その上でアンコモンにはデッキのグレードを引き上げるものがいくつか存在。他のデッキでは強く使えないため、ポジションが取れていて、パックから出さえすれば集まってくる。
その他、カードとしての人気は低いが人間デッキでは重宝するカード群。
ただしどれも入れ過ぎたくは無いので枚数には注意。大体1枚、多くても2枚に抑える。
要点は「どれだけシナジーに寄せ切ることができるか」。不純物が入れば入るほどデッキは弱くなる。「人間特化」というのが肝で、要は変容ギミックが受からない。基本は卓1人が前提で、参入後は覚悟を決めて関連パーツをかき集めていく事になる。
サンプルリスト - 白黒人間(7勝2敗)
デッキ内のほぼ全てのカードを人間絡みで統一できており、強固。
《聖域封鎖》《想起の拠点》はピックできていないが、《将軍の執行官》《不吉な戦術》が2枚ずつあり、アンコモンによるアップグレードもできている。
上記リストは《雄々しい救出者》と《罠の戦術家》のサイクリングギミックをハイブリットしている。
これらも人間であるためシナジーがあり、キーカードである《揃った突撃》もサイクリングを有していることから能力誘発に貢献する。
《相互破壊》は癖の強い除去だが、《囁く兵団》やトークンギミックを用いる白黒人間であれば勝手が良い。他のデッキでは使いづらいので安くピックしやすく、2枚までは採用しても良い。
▼青赤スペル
サンプルリスト - 青赤スペル(7勝2敗)
《禁じられた友情》+《心を一つに》のお手軽コンボは安く便利なパッケージ。
墓地に呪文が溜まるので《呪文喰いクズリ》が二段攻撃を得やすく、《雷猛竜の襲撃》も扱いやすくなる。また盤面に除去リスクの低い非人間クリーチャーを用意できるので変容の受け入れまで達成。立ち上がりとしてこれ以上ない働きをする。
これを土台とし、その上にどういった勝ち手段を載せていくかが肝要で、上記サンプルでは《霜のオオヤマネコ》《霜帳の奇襲》と言った「攻撃を押し通すカード」を多用。《心を一つに》で得たリソースを贅沢に使い倒す方針を取っている。本来は赤の除去を交えてもう少し力強く戦えるようにすることが好ましいが、ピックできなかったのでよりテンポ面を意識した。
またドローソースを多用するデッキで注意が必要な点として「デッキ内のスペル濃度」が挙げられる。ドローソースはどこまでいっても「ドローするだけのカード」であり、デッキの呪文スロットに単純にドローソースを当て込むだけではマナフラッドを起こしやすくなる。1,2枚入れるだけならそれほど気にする必要はないが、上記リストは《心を一つに》が4枚あるため、デッキ内のスペル濃度が薄くならないように土地を15枚に切り詰め、《さまよう怪物、イダーロ》(逃れ得ぬ災厄、ゴジラ)のような高コストカードを排除し、マナフラッドを起こす前に勝ち切るプランを選択している。
サンプルリスト - 青赤スペル・相棒ルーツリー(7勝1敗)
《呪文追い、ルーツリー》はリミテッドにおける相棒の中でも一際強力な部類。元々ハイランダーチックな構造になるリミテッドにおいては制約が緩い。
《呪文追い、ルーツリー》のコピー先をイメージしてピックする。サンプルリストではピックできなかったので入っていないが、《火の予言》《安堵の再会》は是非ともほしく、入っているもので言えば《予期》や《交感の力》は安いカードなのでピックもしやすく噛み合いが良い。《疾風》も飛行クリーチャーが存在し軽く唱えられるのであればコピー対象として優れる。
サンプルリスト - 青赤スペル・相棒カヒーラ(7勝2敗)
スペル軸によりある程度クリーチャー数を絞れる青赤に相棒として《孤児護り、カヒーラ》を組み込んだ形。
構築では地味な扱いを受ける《孤児護り、カヒーラ》だが、ことリミテッドにおいてロード能力は強力。《禁じられた友情》+《心を一つに》パッケージは最序盤の展開に優れるものの中後半で引いてきた《禁じられた友情》に価値を見出せない点が問題となるが、確定ロードである《孤児護り、カヒーラ》が面戦略を確約してくれる。「絶対に引くことができるロード」の存在が呪文の価値を引き上げてくれる。
《孤児護り、カヒーラ》は青でも赤でもないので採用するためにはマナサポートが必要不可欠だが、前述の通り白青のアーキタイプが弱過ぎるため《平穏な入り江》がピックしやすい。この理由からジェスカイの3色は比較的マナベースを強固にしやすい。
青赤スペルにおける注意点
弱いカードを使わないこと。主に以下の2枚。
《火傷吐きグレムリン》
確かにデッキにスペルは沢山入っているが、マナが余らない。マナは毎ターン限界まで使い切る。起動型能力が0マナなら素晴らしかったが、1マナ起動が致命的。何度もテストしたが常に弱かったので絶対に入れてはいけない。
《パイロケラトプス》
デッキに噛み合っているように思えるが、4ターン目というのが遅い。4ターン目にはある程度呪文を消費してしまっているし、このカードをプレイするターンは場のクリーチャーの攻撃が止まりがちであるため、せっかくテンポで押している展開に水を差してしまう。青赤スペルの4ターン目は押し込みに費やしたいターンなので方針に合わない。
▼黒緑
サンプルリスト - 黒緑タッチ白(7勝1敗)
《葉状地のフェリダー》が初手だが、前述の通り白緑は弱いアーキタイプなので早い段階から多色化を検討し、青との天秤にかけた上で除去を多く取れた黒にシフト。
長いレンジのゲームをするため、相手の脅威に対応する手段が重要。除去は言わずもがな、《記憶漏出》は『イコリア』ドラフトをする中で評価が高まった1枚。ハンデスにありがちな「打ち時を失って腐ってしまう問題」もサイクリングによって解決されている。「ドラフトにおける3マナハンデスはあまり強くない」は定説だが、サイクリングが付与されたことでカードの性質が劇的に変化しており、今セットのものはそれ単体で評価を改める必要がある。黒いコントロールであれば2枚まではほしい。
またゲームが長引いた際それが有利に働く構造が必要不可欠。《野生肉の密猟者》は《頑丈なダンゴムシ》と合わせることで恒久的なブロッカー・ライフ・リソースをもたらし、対戦相手の除去にも耐性がつく。
《大いなるサンドワーム》は終盤のフィニッシャーだが、そうした高コストフィニッシャーにありがちな「重さゆえに序盤役割の無いカード」という問題点をサイクリングによって解消している。序盤にサイクリングした《大いなるサンドワーム》は《生存者の絆》で回収できるので、これも1枚あると便利。また《生存者の絆》は人間も回収対象に含めるとアドバンテージを獲得でき、この点に関しても《野生肉の密猟者》は勝手が良い。能力の性質上優先して除去されやすいため、回収対象にしやすい。
《生存者の絆》をリソースカードとして運用するためにはデッキ内の人間クリーチャーカウントが重要。ただし後半旨味の無い人間(《謙虚な自然主義者》など)を拾っても意味が無いので、価値の出し方を意識しておく。上記サンプルの場合、《野生肉の密猟者》がピック出来なかったことと、《葉状地のフェリダー》がピック出来ていることを合わせて《慎重な認知眷者》をやや高めにピックした。《葉状地のフェリダー》のためだけに警戒クリーチャーをデッキに投じるのは抵抗があるが、2種あれば《苔毛のゴリアク》のようなカードも許容できる。
また緑系のコントロールデッキは対アグロ(特に白赤)対策に《蜂蜜マンモス》が1枚はほしい。ただしこれはサイクリングを持つ《大いなるサンドワーム》と異なりかさばってしまうことが許されないので、1枚程度。優先し過ぎず、ただし軽視し過ぎずということで取るタイミングが難しいが、最終形には必要な1枚。1週したタイミングで取りたいカードなので、どのパックにいたかを覚えておくと良い。
▼青緑
サンプルリスト - 青緑変容(6勝3敗)
※最近やっていないので過去ドラフトしたものを再現
クリーチャーを主体とし、変容・多色化のビートダウン戦略。20枚近いクリーチャーと、《充分な成長》のような強化呪文も採用し攻撃的な展開を目指す。
序盤の戦力として《渡る大角》を利用することになりやすく、バリューを出すために3色目以降のタッチが推奨される。基本は除去を追加できる黒か赤。レアがあるとより指針が立てやすい。
逆に言えば、ハイバリューなタッチカードが無ければ青緑だけでは価値を示しづらい。変容して殴るだけのコンセプトは除去リスクと真っ向勝負しなければならなくなるため。ゆえに何かしらの動機(大方レア)を携えて、デッキパワーを担保しての参入が好ましい。
また青緑は変容元の確保が課題にある。《本質共生体》は基本的なスペックを兼ね備えつつ変容時のバリューがハッキリしておりベストだが、緑系の2マナ域としては高級品であるため、高めに取らなければ複数枚を確保するのは難しい。
《万能のブラッシュワグ》は悪くないが複数枚を採用しづらく、《微光クラゲ》はピックしやすいがこれも多投は好ましくなく、《両生共生体》はアンコモンのため出に左右されるなど、どれも問題点を有している。
低マナ域の確保に困った場合は《不思議な卵》を1枚まで採用しても良い。
完成した時・回った時のインパクトが強いが、「デッキパワーを担保するレアが取れるか」「変容元と変容先のバランス」「相手側の除去の有無に左右されやすい」などいくつかの不安定要素を抱えているため、tierは下げて設定している。
▼青黒
前述の通り「青黒コントロール」として構築する。
サンプルリスト - 青黒コントロール(6勝3敗)
※最近やっていないので過去ドラフトしたものを再現
非常に青黒然としたコントロール。
何かパンチの効いたレアがあれば7勝に到達したと思うが、コモン・アンコモンの組み合わせだけではイマイチ勝ち切れない。特に上位tierである白赤サイクリングの破壊力、白黒人間の面戦略、青赤スペルのアドバンテージ・テンポ戦略が厳しい。このデッキは6連勝の後3連敗。(アリーナリミテッドラダーの対戦相手は現在の成績を参照するため、ラウンド後半は上位アーキタイプとマッチングしがち)
黒い除去による基盤の強さが売り。この点は黒緑と変わりない。
ここがtierの差を生む要因で、上記リストを見てもらっても分かると思うが要は「青である意味がない」。緑はクリーチャーの太さ、多色化によるデッキパワーの底上げ、《再来》という固有のパワーカードを用いることで確かな価値を示すことができるが、青には明確な利点が無い。もし青黒をドラフトするのであれば、通常「青を固めたい理由」が存在していることが求められる。
上記リストでは赤をタッチして《ヤマオウム》を採用している。《靴かじり》《微光クラゲ》の2種変容元と相性が良く、前者は接死砲台、後者は2マナ1点マシンガン。今回はピックできていないが《泥棒カワウソ》なら相手プレイヤーにダメージを与える毎に1ドローのアドバンテージマシーン。(クリーチャーに与えた場合はドローできないので注意)
《ヤマオウム》は単体でも強力なカードだが、青や黒と組み合わせることでシナジーを発揮し、双方の受けがある青黒でのタッチは一際強力になる。
▼黒赤
前述の通り「黒赤ミッドレンジ」として構築する。
黒赤のカラーリングの利点は「除去の豊富さ」。コモンからレアまで多量の除去が存在。どのアーキタイプをプレイするにあたっても変容によるイージーウィンを許さないために最低限の除去が必要不可欠で、赤黒はその点で全く困らない。
サンプルリスト - 黒赤ミッドレンジ(6勝3敗)
※最近やっていないので過去ドラフトしたものを再現
除去ミッドレンジ。青緑変容のようなデッキに対しては強いが、デッキパワーの高い白赤サイクリング、面戦略の白黒人間、テンポ・アドバンテージに優れる青赤スペル、同系列でより骨太な黒緑など、上位tierに対して不利。下位tierは結局こうなってしまう。
サンプルリスト - 黒赤ミッドレンジ・相棒ジャイルーダ(7勝0敗)
《深海の破滅、ジャイルーダ》は概ね普通にデッキに入れてしまう方が良いとされているが、初手付近でピック出来た場合は相棒としても良い。混成マナのため無限にバリエーションが存在するが、その中の一つに赤黒がある。
赤と黒は偶数マナ域に優秀な除去があり、これが大きい。これまでいくつかのアーキタイプに触れてきたが、「除去がある」というだけで有利が取れるマッチアップが存在する。除去が強いのはいつものことだが、今セットは変容のごり押しが存在する手前より一層の安心感がある。
《溶岩の海蛇》《聖域潰し》はジャイルーダ効果の「当たり要因」として強力で、かつサイクリングを持つことから複数枚をデッキに投じやすくヒット率の上昇に貢献する。《屍体の攪拌》はジャイルーダを再利用可能。ただし乱発するとジャイルーダの効果と合わせてライブラリーアウトする危険があるため、《溶岩の海蛇》を多投してジャイルーダプレイ時の殺傷力を上げておくか、1枚程度に抑えるのが無難。
また赤黒と紹介しつつもサンプルリストは均等寄りの3色であるが、再現する際も3色での構築が推奨される。なぜなら、偶数縛りゆえ2色にまとめると弱いカードが多く入ってしまいやすくなるため。上記サンプルもピック中それに気づくのが遅れ後半無理矢理舵を切ったため弱いカードが多く入ってしまっているが、もう少し早く検討できれば強くまとめられたと思われる。前述したように混成マナゆえあらゆる組み合わせが想定でき、どの3色とするかはセンスが問われる。
総括
tier項でも述べたように、各アーキタイプの間でデッキパワーの差が大きい。勝率を重視する場合は上位tierに寄せたピックをするのが無難。中位~下位tierに手を出す際は明確な動機(大方レア)が担保されている場合に限定すると良い。「ポジションが良い」程度の感覚で手を出すと、後付けのレアが得られなかった場合簡単に負ける。白青や赤緑などはレアが得られても負ける。
またレアの種類によっては上位tierにタッチで組み込んでプレイした方が良いケースも多く、個人的な感想としては「いかに弱いアーキタイプを回避するか」が命題だと感じている。tier3以上は完成度次第で競り合える。
僕がミシック到達までにこなした10回のドラフトの成績は以下の通り。
7-1 白赤サイクリング(相棒:ザーダ)
5-3 青緑(タッチ黒)変容
7-0 白赤サイクリング
5-3 黒緑(タッチ白青黒)変容
5-3 ジェスカイコントロール(相棒:ルーツリー)
6-3 青赤(タッチ黒)スペル
7-1 黒緑(タッチ白)
7-1 青赤スペル(相棒:ルーツリー)
7-2 青赤スペル
中位以下のtierは意図的に回避している。有効な戦略を見出すことができればプレイする気も起きるが、相手にしてもまず負けないのでドラフトする気が起きない。そして負けの半分近くは白赤サイクリング。強過ぎる。
終期はカード供給が安定しやすい青赤スペルにピックを寄せていた。コモン中心のデッキタイプは再現性が高く信頼できる。1周しやすいカードを理解してからはさらに勝率が伸びたと思う。
最後に、勝率を上げるポイントは「負けやすいアーキタイプをプレイしない」「自分の型にハマるアーキタイプを見つけピックを寄せる」の2点。ドラフトを繰り返す中で勝ちパターンを見出していく事が大切。逆に負けパターンは回避する。
僕なりの解釈でザックリと解説したが、助けになれば幸い。